研究課題
若手研究
共融溶媒系高エネルギ一液推進剤(ADN-EILPs)は,高エネルギ密度であるとともに高い取扱性が期待される一液推進剤である.その反面,ADN-EILPsは難着火性であり,スラスタ応用において点火に関する技術課題を抱えてきた.これまで申請者は点火に関する研究を展開し,レーザ輻射加熱点火法の有効性を見出すに至った.しかし,当該スラスタ内での着火遅れは予想より長く,短縮化の方針を明確にする必要があった.本研究では,ADN-EILPsがスラスタ内で着火に至るまでの現象を時系列に沿って整理し,各現象の原理原則を様々な工学的視点から解明することで,当該スラスタの動作遅れに対する学理的制御則の構築を目指す.
共融溶媒系高エネルギ一液推進剤(ADN-EILPs)は,高エネルギ密度であるとともに高い取扱性が期待される一液推進剤である.その反面,ADN-EILPsは難着火性であり,スラスタ応用において点火に関する技術課題を抱えてきた.申請者は点火に関する研究を展開し,吸光材を用いたレーザ輻射加熱点火法の有効性を見出すに至った.しかし,当該スラスタ内での着火遅れは予想より長く,短縮化の方針を明確にする必要があった.本研究課題では,ADN-EILPsがスラスタ内で着火に至るまでの現象を時系列に沿って整理し,各現象の原理原則を様々な工学的視点から解明することで,当該スラスタの動作遅れに対する学理的制御則の構築を目指している.本年度は,新たに実験系を構築し,吸光材及びADN-EILPsの輻射加熱における影響因子の同定と昇温速度の取得を行った.既往研究で吸光材として使用されるカーボンウール単体を用いて,レーザ出力毎の吸光材昇温速度への影響度を実験的に整理した.また,推進剤とカーボンウールから成る試験サンプルのレーザ点火試験を行った結果,レーザ変数によらず,着火遅れは広い分散を有することがわかった.本結果は前述する吸光材昇温速度においても同様で,その源泉は吸光材表面状態のランダム性によるものと推測された.このことから,前述する区分のうち、本試験環境における律速段階は,推進剤の被加熱・熱分解であろうと予想された.本課題の目的である現象の精度良い予測には実験再現性の十分な保証が望ましい.次年度は吸光材の再考を皮切りに,精度良い各種反応遅れの取得・解析を目指すことで,本課題に対して更なる考察を試みる.
2: おおむね順調に進展している
当該年度では,新たに設計した実験系を用いた吸光材および推進剤含浸体のレーザ点火試験から,トータルとしての点火遅れ(反応)の律速段階の推定に至った.ただし,当初想定していない,点火遅れの再現性といった研究課題が抽出され,これが研究立案段階よりレーザ吸光材の標準サンプルとして取り扱ってきたカーボンウールの特性に起因することが予想された.このことより、吸光材の再検討といった、新たな研究小課題の抽出とその課題解決が必要となったが、年度終了段階までに、化学・物理特性を基準とした、カーボンウールに代わる新規吸光材の絞り込みとその手配に至っている.以上のことから、現在までの進捗状況として【(2)概ね順調に進展している。】とした.
第1に,再現性が十分確保できる吸光材を再考する.具体的には多孔質体の活用を検討しており、耐熱性や熱伝達の観点から、金属・金属酸化物・セラミックス・炭素系の利用を予定している.第2に,温度履歴の取得を行い,吸光材および推進剤含浸体の加熱挙動の定量評価を試みる.点火や燃焼反応は極めて早い反応であるため、市販のシース型熱電対や熱電対素線では熱挙動の追従が困難である.この対応として、申請者の過去研究(科研費番号18J14397)で用いた,(a)極細熱電対による温度直接計測と(b)赤外高速度カメラを用いた間接計測の2手法を導入する.これと並行して,推進剤単体,吸光材単体,推進剤含浸体の熱分析(e.g. TG, DTA, DSC)を実施することで,レーザ加熱時の実効的な反応速度の推定を行う.第3に,気相の反応遅れを予測すべく,1D/2D反応性流体シミュレーションのセットアップを試みる.当該シミュレーションはAnsys 2023R01を用いて実施する予定であり,必要となる詳細化学反応機構は過去研究(科研費番号20K22430)で構築済である.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 13件)
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