研究課題/領域番号 |
22K14446
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 道也 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20916225)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 項間交差 / 熱重合 / 重合性物質 / 反応解析 / 反応危険性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、自発熱重合機構の要点である項間交差過程の詳細反応モデル構築技術を確立し、重合性物質の自発熱重合機構を解明することであり、その安全制御技術の創成を目指す。研究では、アクリル酸メチル、アクリル酸を対象に量子化学計算を用いた素反応モデリング、遷移状態理論に基づく速度定数算出、統計熱力学に基づく熱力学データ算出を実施し、詳細反応シミュレーション結果と実験結果を比較検証することで現象を解析する。結果に基づき分子構造論、化学反応論から化学産業における安全制御技術へ展開する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、項間交差過程に関する詳細反応モデル構築技術を確立し、重合性物質の自発熱重合機構を解明し、その安全制御を目指すものである。特にアクリル酸エステルの自動酸化反応を第一原理よりモデル化する技術を構築し、その機構解明を目的とした。 2022年度まではアクリル酸メチルの等温エアレーション条件下における自動酸化反応速度に関して、70℃のみの実験値しか得られておらず、反応速度の温度依存性が不明であった。2023年度は、試験装置を改良し測定データの即時性、連続性の向上に成功し、30~50℃の間の反応速度測定を完了した。これにより自動酸化により生成する過酸化物濃度の予測式の構築に至り、本成果を国際会議等で報告した。 本研究では、これまで定量が困難であったアクリル酸メチルの自動酸化反応における反応生成物である過酸化物の定量に成功し、紫外吸光分析による定量測定技術を構築した。また、反応モデルに関しては、現象を素反応から記述して詳細化し、いくつかの反応を追加することで改良した。モデル予測結果は実験結果の傾向を説明するものとなったが、一部が再現できておらず、更なる改良が必要であることが分かった。 今後は、引き続き反応モデルの詳細化を実施するとともに、項間交差過程の反応速度の計算方法を見直す。また、実験方法についても紫外可視吸光分析における光軸固定方法や試料の揮発を除外するような方法を採用することで、より高精度な測定を実施する。また、既往研究を参考に試料の溶存酸素濃度を調整した実験を実施することで、上述した予測式に溶存酸素濃度の変数を加味した式への改良を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物価高騰により、実験的検討の進捗に影響を受けたが、研究は概ね順調に進捗したと判断する。 理由として、試験装置を改良し測定データの即時性、連続性の向上に成功し、さらに自動酸化の温度依存性を考慮した、過酸化物濃度の予測式の構築に至ったことが挙げられる。本測定手法により、反応機構モデル検証用の実験結果を得ることができた。本成果は複数の国内学会、国際学会にて公表されている。 また、反応機構モデルについても改善点について解決の見通しが得られつつあり、次年度にはおおむね構築できるものと考える。 以上より、モデル検証に有効な定量測定結果が得られたことに加え、その成果が活発に報告されている点を鑑み、順調に進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
反応モデルに関しては、素反応機構の記述を見直すことで改良を試みる。各素反応の速度定数算出に当たっては第一原理計算に溶媒効果を加味して実施する。また、モデルに基づくシミュレーションにおける各素反応の感度を評価することで、現象を支配する素過程を特定し、より高精度な計算手法により速度定数を算出することで、モデル全体の信頼性向上を図る。特に、反応初期でアクリル酸メチルから生成する活性中間体に対し、すべての異性体を考慮して反応速度定数を算出する計画である。
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