研究課題/領域番号 |
22K14463
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馮 斌 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (20811889)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 粒界移動 / 原子分解能電子顕微鏡 / セラミックス / 電子顕微鏡 / その場観察 / 原子分解能 |
研究開始時の研究の概要 |
粒界移動現象は材料科学において重要な課題であり、材料の微細組織の形成を支配するのみならず、様々な特性にも直接関連していることが報告されている。本研究では先端原子分解能走査透過型電子顕微鏡法を高度化し、セラミックス粒界移動過程の直接観察法を確立するとともに、多様なセラミックス材料に展開することで、セラミックス粒界移動のメカニズムの本質的解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、セラミックス粒界移動過程における原子レベル直接観察を試みることにより粒界移動メカニズムの解明を目指す。当該年度はまずバイクリスタル法により、整合性が異なるアルミナ(Al2O3)粒界を系統的に作製した。一連の粒界を対象に、電子ビーム照射とSTEMを高度に融合した観察法を最適化し、粒界移動の直接観察を試みた。 その結果、整合性の異なる粒界では異なる粒界移動挙動を示した。整合性の高いΣ7粒界において、粒界エッジにおける原子列が特定の方向に向かってシャッフルすることで、粒界の移動が発生する。この際、粒界は常にその構造ユニットを変化させながら移動することが観察された。一方整合性の低いΣ31粒界の移動過程において、その一部はΣ7粒界と同様に、粒界エッジ部分の原子が特定の方位にシャッフルすることで粒界移動が発生するが、粒界移動中に界面欠陥(disconnection)の形成も観察された。この際、移動前後で粒界構造は変化せず、移動した粒界と移動していない粒界の間にはdisconnectionが形成される。 次にこのような粒界性格依存性の起源について探求した。本研究では粒界原子構造の幾何学から形成されうるdisconnectionのバーガスベクトルと相対エネルギー差を計算し、実験結果と比較した。その結果、disconnectionエネルギーが低い場合のみ、粒界移動中にdisconnectionが形成される。一方disconnectionエネルギーが高い場合、disconnectionが形成されず、原子カラムシャッフリングにより粒界構造が変化しながら移動することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画通り、Al2O3粒界移動挙動における構造依存性に着眼し、研究を推進した。電子ビーム照射とSTEMを融合したSTEM観察条件を最適化し、異なる性格を有するAl2O3粒界移動過程の直接観察に成功した。さらに粒界移動挙動とdisconnectionエネルギーとの相関性を検討し、粒界移動における構造依存性の起源を解明した。また、一連の結果は既に国際学術論文に掲載されており、国内外の学会にて発表している。以上により、本研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、まず異種元素偏析が粒界移動に及ぼす影響について解析する。実用セラミックス材料は通常微量の異種元素を添加し、材料の微細組織を劇的に変化させることができるため、異種元素は粒界移動挙動に大きな影響を与えると予測される。本研究では、Al2O3の粒成長挙動に異なる作用をするドーパント(TiとSi)を選択し、TiおよびSiが偏析したAl2O3モデル粒界をそれぞれ作製し、粒界移動過程を直接観察し結果を比較することで、異種元素偏析の効果について解析する。また、SrTiO3やZrO2モデル粒界を作製し、粒界移動直接観察を行うことで、セラミックス粒界移動に共通する普遍的なメカニズムを探求する予定である。
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