研究課題/領域番号 |
22K14467
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
服部 裕也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, NIMSポスドク研究員 (00907975)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 熱電材料 / 電子構造 / STM / 量子振動 / 熱電物性 |
研究開始時の研究の概要 |
熱を電気に変換する熱電発電では、従来物質の2倍を超える変換効率をもつ物質が2010年以降次々と発見され、注目を集めている。しかしながらその巨大な熱電性能指数の物理的起源は明らかになっていない。熱電物性は物質の電子構造により決定されるが、熱電材料に対して通常行われる多結晶高温輸送測定では、結晶方位のランダムさ・kBT程度の熱揺らぎに起因して電子構造の情報は失われてしまう。本研究では熱電物質の単結晶サンプルに対し、量子振動測定などの電子論的手法を応用することで、熱電性能の鍵を握る電子構造を実験的に決定し、熱電物性に与える影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、強磁場輸送測定とScanning Tunneling Microscopy (STM)測定を相補的に用いることで、近年PbTe系で報告されている巨大な熱電性能(zT>2.5)の物理的起源を解明することを目標としている。 Sr/NaドープPbTe単結晶サンプルを作製し、輸送測定では量子振動測定およびホール係数の温度依存性を測定し、STMでは局所状態密度を測定した。これらの実験データを解析することで、T=1 K程度の低温ではL点に位置する軽いホールポケットのみが伝導に寄与し、高温(T=200 K以上)ではL点での軽いホールポケットに加えΣ点に位置する重いホールポケットが伝導に寄与することを実験的に明らかにした。本系では移動度の高いLバンドが電気伝導率σを向上させ、状態密度の大きい∑バンドがゼーベック係数Sを増加させることで、高いzT(=σS^2T/κ)が得られていると考えられていたが、詳細なバンド構造は不明なままであった。本研究では、輸送測定とSTM測定を組み合わせることで電子構造を定量的に決定することに成功し、Sr/NaドープによりPbTeの電子構造が大きく変調することを明らかにした。この結果はPhys. Rev. B誌から出版された。 また本手法を他のシステムに応用するため、別の系での単結晶作製を試みた。当初得られた結晶は多結晶であったが、状態図をもとに育成条件と組成を最適化することで単結晶の作製に成功した。この系においても、強磁場輸送測定とSTM測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で最初に取り上げたSr/NaドープPbTeでは、低温でのバンド構造を詳細に決定し、温度上昇に伴いキャリアがL点とΣ点にどう分配されるかを定量的に明らかにした。強磁場測定やSTM測定は熱電材料分野ではあまり行われていない測定手法であるが、これらが熱電材料の電子構造を決定するための強力なツールとなりうることを示した。さらに本手法を他の物質系に適用することで、巨大な熱電性能の物理的起源を探ることができるはずである。以上をふまえると、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本手法を他の物質系へ適用する。単結晶の作製は完了しており、強磁場測定およびSTM測定を順次行う予定である。特にSTMで明らかにされる局所的な電子構造は、輸送測定では得ることができない情報であるため、STM測定を優先的に行う予定である。
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