研究課題/領域番号 |
22K14471
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
望月 泰英 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30910179)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 負熱膨張材料 / フォノン / 第一原理計算 / グリュナイゼン定数 / 擬調和近似 |
研究開始時の研究の概要 |
IoT社会に向け,半導体不足が続く昨今,温めると縮む負熱膨張材料は,温度変化の激しい半導体素子の長寿命化に貢献できる機能性材料である.その学術的・産業的課題は,負熱膨張性の発現機構が不明であること,毒性元素・希少金属を用いることにあり,安心・安価な元素を用いた負熱膨張材料の開発は急務である.本研究では,地球上に豊富な元素で構成される材料と,既往の希少金属を含む材料について理論検討を行い,負熱膨張材料の元素・構造依存性の理解,設計指針に基づく新規負熱膨張材料探索を目的とする.
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研究実績の概要 |
固体の熱物性の設計指針を確立するため,46種類の単体元素と45種類の二元系酸化物について,第一原理格子力学計算を用い,有限温度における体積熱膨張係数α,体積弾性率B,平均原子体積V (格子体積を格子内の原子数で割った値),グリュナイゼン定数γの系統的な計算を行った.その結果,(i)大きなVを有する結晶は小さなBをもつ傾向があること,(ii)γの主要な役割はαの符号の決定であり,その値は結晶構造と配位数によって支配されること,(iii)横波音響フォノンや低周波数の横波フォノンが,負熱膨張挙動に大きく寄与していること,(iv)負熱膨張材料は比較的大きなVを有し,結晶構造内に空隙のある構造を有すること, (v)負熱膨張材料の共通の特徴は,結晶内の空隙空間に向かって振動するフォノンが存在することであることを突き止めた.本研究成果は,低熱膨張材料や負熱膨張材料を設計するための,幅広い物理化学的視点を提供することが期待される(J Phys Chem C 2024). 更に,負の熱膨張を示す物質は,対称性の高い空間群,大きな平均原子体積,点共有された八面体および四面体配位構造をもつ.これに対して,低い対称性を有する単斜晶系Cu2P2O7は,平均原子体積が小さく,綾共有構造をもち,負熱膨張挙動を示すことが報告されているが,その詳細なメカニズムは不明であった.研究代表者らは,第一原理格子力学計算を用いてCu2P2O7の負熱膨張挙動を解析した.第1ブリルアンゾーン全体にプロットしたグリュナイゼン定数γの分布から,負熱膨張に最も大きく寄与するフォノンは特殊点ではなく,その間に現れることがわかった.本研究成果は,負熱膨張挙動に寄与する,最も負の値をもつγが必ずしも対称性の高い特殊点にあるとは限らないことを示しており,当研究分野に一石を投じた成果である(J Phys Chem Lett 2024).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
温度上昇に伴い,格子体積が減少する負熱膨張材料には,設計指針もない上,その詳細な機構も明らかではない物質・材料がほとんどであった.その中,研究代表者は,単体元素や二元系酸化物の網羅的な第一原理計算から熱膨張係数を支配する因子が何であり,負熱膨張材料でみられる共通の特徴を突き止めたこと,更には,一般的にみられる負熱膨張材料の特徴とは全く異なる負熱膨張材料Cu2P2O7の機構解明に至ったことが,上記のように判断した理由として挙げられる.まだ研究遂行中の研究課題も多くあり,今後,当該分野を進展させる成果を出せるよう精進していく所存である.
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今後の研究の推進方策 |
擬調和近似法は,温度一定の条件下で,格子体積のみを変化させた時のフォノン振動数の変化を考慮するという意味で,固体の原子間ポテンシャルの非調和項を取り入れ,固体の熱膨張挙動を解析する手法として非常に優れた方法である.しかし,有限温度に由来する非調和項の強い物質の場合,擬調和近似法では太刀打ちできない場合があることを,理論計算と実験実証により経験した.従って,今後の研究においては,第一原理分子動力学計算を用い,固体の原子間ポテンシャルの非調和項をより取り入れた計算を実行し,代表的な負熱膨張材料ScF3といった系で,3種類の非調和項の大きさを見積もれるような手法開発に挑戦する.
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