研究課題/領域番号 |
22K14476
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
SEO Yeongjun 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60943610)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 低温焼結プロセス / ガラス / ミネラリゼーション / 結晶化 / 結晶化ガラス / 多機能型材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、様々なガラスやセラミックス材料の極低温焼結プロセスの開発と材料工学的機序の解明と指針構築である。そのため、焼結プロセスと類似した自然現象であるミネラリゼーションをガラスの低温緻密化プロセス中に反応選択的に再現させる、即ちガラス粒子と過飽和溶液を活用したミネラリゼーションにより粒子表面・界面へナノ結晶相を形成し粒界の空隙を埋めることで従来のガラス焼結温度より大幅に低い200℃以下で90%以上の緻密化、かつ、結晶形成から得られる新たな特性によるガラスの機能化をもたらす新規な材料創製プロトコルの更なる進化・発展を図る。
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研究実績の概要 |
近年、マイクロ波焼結法、放電プラズマ焼結法、レーザー焼結法等のように熱源を向上し、焼結温度の低下や焼結特性の改善が得られる焼結プロセスが報告されているが、未だにその焼結温度は数百℃以上である。そこで、本研究では遥かに低い焼結温度(<200℃)でアルミノシリケートガラス(Al2O3-SiO2系)の緻密化が可能な低温焼結プロセスの構築を目的としている。具体的には、アルミノシリケートガラス粉末にミネラリゼーション反応を誘導できる溶液(NaOH、LiOHなど)を加え、金型に投入し加圧・加熱することで、ミネラリゼーション反応の沈殿ー再析出効果により第2相(非晶質または結晶質)が形成され、ガラス粒子間の隙間を埋めることができ、ガラス粒子の低温緻密化が可能になる。さらに、第2相の形成より母材が持っていない新たな特性(機械的特性、耐熱性、耐薬品性、透明性など)の獲得ができ、多機能型ガラス材料の開発への展開の可能性が高い。そのため、研究実施計画は、(1)非生体活性化ガラスのミネラリゼーション反応検証と機構解明と(2)ミネラリゼーションを伴う焼結プロセスを用いたガラス材料の多機能化手法の提案の2段階に分類しており、現在、アルミノシリケートガラスの低温緻密化を成功的に進めている。特に、緻密化の駆動力となるミネラリゼーション反応の検証ができ、新しい焼結法のコンセプトの妥当性が確認できたため、ガラス材料の新しい展開に向けた材料システムの発達に寄与できることが本研究の意義である。また、SDGsに向けて、本研究の低温プロセスは、従来の焼結プロセスの焼結温度より遥かに低い温度で焼結が可能であるため、大幅にエネルギー消費量を削減できる。本研究は持続可能な発展のために適合する研究であり、社会的にも有益な発展を引き起こすことができると強く考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度より、非生体活性化ガラスのミネラリゼーション反応検証と機構解明を進行しており、非生体活性化ガラスとしてアルミノシリケートガラス(Al2O3-SiO2ガラス)を選定した。Al2O3-SiO2ガラスは、その組成が非常に多いため、まず、緻密化中のガラスネットワークの変化挙動を調べた。スタート材料として、ガラスネットワーク構成剤のみの2成分系のAl2O3-SiO2ガラス(SiO2:Al2O3 = 60:40, wt%)を合成した。また、ミネラリゼーションを誘導する溶液としてはNaOH水溶液を選定した。低温緻密化条件(溶液含有量、温度、圧力、焼結時間)は、相対密度を基準にし最適化を行った。その結果、20wt%、180℃、500MPa、30分で最も高い相対密度(89%)を示し、さらに、緻密化中、sodium aluminosilicate系結晶の形成が確認できた。これはNaOH水溶液によりSi-O-Siネットワークが破壊され、放出されたAlイオンとSi-OHがNaOH水溶液のNaイオンと反応したためだと考えらえれる。そこで、ガラスネットワークの中に、Si-O-Siネットワークの量によって緻密化および結晶化挙動が変わる可能性が考えられたため、アルミナ含有量が異なるAl2O3-SiO2ガラスを追加合成し、現在、検証を行っている。当初の計画より、詳細な緻密化メカニズムの解明が期待されることから、様々な組成のAl2O3-SiO2ガラスへ最適な緻密化条件を提供することが可能になると考えられる。 上記と同時に、本研究の低温緻密化プロセスをセラミックス材料(ハイドロキシアパタイト)へ適用し、200℃以下で透明なハイドロキシアパタイト構造体を作製した。本件に関しては、特許出願や学会発表を行っており、Al2O3-SiO2ガラス材料の緻密化に関しても特許出願や論文投稿などを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度より6年度までに、上記項目に記述したようにアルミナ含有量が異なるAl2O3-SiO2ガラスの緻密化および結晶化挙動とガラスネットワーク変化との相関関係を明らかにする。また、NaOH水溶液以外にもLiOH水溶液を用い、緻密化することで異なる結晶相の成長を誘導し、他組成のAl2O3-SiO2ガラスへの拡張展開を進める。その組成としては、Li2O-Al2O3-SiO2(LAS)系とMgO-Al2O3-SiO2(MAS)系ガラスを選定した。LAS系ガラスの場合、LiOH水溶液を利用し低温緻密化することで、Li2Si2O5やLiAlSi4O10などの結晶相の成長を誘導し、優れた機械的特性と耐熱性を持つLASガラスセラミックスの作製を試みる。また、MAS系ガラスの場合、NaOHやLiOH水溶液を用いて緻密化し、コージライト結晶や他の結晶相の成長を誘導することで、耐プラズマ性以外の特性を持つ多機能型ガラスの開発を目指す。 上記ガラス材料の低温緻密化および機能化に関する研究を進めながら、同時にセラミックス材料のミネラリゼーション反応を用いた低温緻密化の研究も進行する。ハイドロキシアパタイトは生体親和性が優れた材料であり、ZrO2やTiO2との複合化することによって不足な機械的特性を向上することができる。ミネラリゼーション反応が優れたハイドロキシアパタイトにZrO2やTiO2を加え、本研究の焼結プロセスを適用し、コンポジット材料の低温緻密化を試みる。さらに、従来の焼結プロセスによる焼結体とその特性(生体親和性・機械的特性など)を比較し、低温緻密化プロセスの改善および効率について議論する。ガラスおよびセラミックス材料の低温緻密化研究を同時に進めることで、さらなる材料開発プロセスの発達に寄与することができると考えられる。
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