研究課題/領域番号 |
22K14478
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
片宗 優貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (50772662)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | n型ダイヤモンド / 熱フィラメントCVD法 / リンドーピング / 金属不純物 / 結晶成長 / 電気的特性 / 化学気相成長法 / 重金属不純物 |
研究開始時の研究の概要 |
n型ダイヤモンド半導体は結晶品質と不純物の制御が不十分な結晶では実現困難と考えられていたが,近年,申請者らは熱フィラメントCVD法を用いて金属不純物存在下においてもリンドーピングによりn型電気伝導性が得られることを発見した.しかしながら,金属不純物やそれに付随した欠陥が存在する結晶において,なぜ電子伝導が失われずに発現するのか,n型ダイヤモンドの電子伝導を決定づける要因は明らかではない.本研究では,熱フィラメントCVDプロセスを適正化することで高品質n型ダイヤモンド膜を実現し,半導体物性評価と結晶構造解析により重金属原子の電気的・構造的作用を実験的に明らかにすることを目的とする.
|
研究実績の概要 |
本研究では,熱フィラメント化学気相成長(CVD)法を用いたリンドープn型ダイヤモンド膜の高品質結晶成長技術の構築し,フィラメント材からダイヤモンド膜に混入する重金属原子の電気的・構造的作用を半導体物性評価と結晶構造解析によって実験的に明らかにすることを目的としている. 初年度である令和4年度は,熱フィラメントCVD法によりリンドープダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させ,二次イオン質量分析(SIMS)によりダイヤモンド膜中の元素の深さ方向分布を取得,および比抵抗・ホール測定により電気的特性の評価を実施した.また,得られたリンドープ膜の結晶品質の指標となる成長後の表面形態を微分干渉顕微鏡を用いて観察した. 成長パラメータを検討した結果,基板温度が成長膜の表面形態および電気的特性に与える影響は大きく,高品質結晶成長の実現のためにはCVDプロセス時の温度制御が重要であることがわかった. また,リンドーピングの制御範囲拡大のため高濃度ドーピングに取り組んだ.リン原料濃度10%の成長条件でエピタキシャル成長させたところ,成長膜においてリン原子の高濃度化および電気抵抗率の低減を確認した.SIMS分析の結果,リン濃度として1×10^20 cm^-3が得られ,室温における比抵抗測定で50 Ohm cm以下の低抵抗化を確認した.また,電気抵抗率の温度依存性から,キャリア伝導機構はリンドナーにより形成される準位を介したホッピング伝導が支配的であることが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題について,当初の計画通りの成果が得られている.熱フィラメントCVD法によるn型ダイヤモンドの作製プロセスにおいて,既報のリンドープダイヤモンドと同様の,高濃度ドーピングによる低抵抗化に成功した.高濃度領域では,電気抵抗率の温度依存性に金属不純物の影響はみられなかったため,低抵抗n型層の形成手法として熱フィラメントCVD法の利用が期待できる.一方,低濃度領域でのドーピングに関しては,熱フィラメントCVD装置内部に残留するリン化合物の影響を受けるため,装置内部のクリーニング工程が重要であることがわかった.今後の課題として,低濃度領域でのドーピング制御の安定化があげられる.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で取り組んでいるダイヤモンド(111)のエピタキシャル成長,とりわけリンドーピングを伴う成長では,温度や圧力などの成長パラメータの適切な設定が求められる.本年度の結果を受け,基板温度に着目して基板ステージ周りを改造することでCVDプロセスにおける基板温度の安定性および制御性の向上を図り,リンドープダイヤモンド膜の高品質化のための最適な成長条件を調査する.並行して,熱フィラメントCVD法により作製したリンドープダイヤモンド膜に関して,カソードルミネッセンス測定により欠陥および不純物の状態を評価し,マイクロ波CVD法で得られる高品質なリンドープダイヤモンド膜との相違点を調べる.
|