研究課題/領域番号 |
22K14482
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
武田 泰明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYSリサーチフェロー (10880966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 高温超伝導線材 / 超伝導接合 / 高温超伝導 / 超伝導マグネット / 微細組織 / 永久電流 / 角度依存性 / 永久電流マグネット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Bi2223高温超伝導接合の特性 (主として臨界電流と接合抵抗) の支配因子を解明し、特性を制御する。様々な接合試料を作製して特性を評価する。次に特性に寄与しうるパラメータを網羅的に調べる。これらの基礎データから、接合特性の支配因子を明らかにし、特性を自在に制御できる接合プロセスを構築する。終端部をこのプロセスによって接合した小コイルを試作し、ほぼ減衰しない超伝導電流 (永久電流) を流す。固体材料化学に立脚した基礎研究によって、実用に供しうるように超伝導接合技術を高度化し、MRIやNMRの省エネルギー化やヘリウムフリー化につながる高温超伝導永久電流マグネットの開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
本年度は主に、約1.6m長の1本の市販Bi2223高温超伝導線材の両端を超伝導接合によってつないだ「閉ループ試料」を使った物性評価を行った。試料を冷却して超伝導電流を流し、電流のわずかな減衰(時間変化)を調べる方法で、超伝導接合の重要な特性である電流容量(臨界電流)と接合抵抗を調べた。超伝導接合に様々な方向の磁場を印加することで、接合特性の磁場印加角度依存性も調べた。さらに、上記の評価後に接合部分の微細組織観察も行った。結果として、以下の3つの成果が得られた。 ・接合抵抗が時間依存性を示すことを明らかにした。この時間依存性は、超伝導体内に侵入した磁場(量子化磁束)の熱的な運動を記述する「磁束クリープ」のモデルを使うことによって、物理的に解釈できることを示した。 ・電流容量と接合抵抗という重要な接合特性は、磁場印加角度依存性を示すことを明らかにした。電流容量の角度依存性は線材とよく似たものであった。ある電流値の場合の接合抵抗の角度依存性は、3つの領域(電流容量よりも小さい電流値で見られる低抵抗領域、逆に容量よりも大きい電流値で見られる高抵抗領域、中間で見られる遷移領域)に分けられることがわかった。 ・Bi2223線材の電流容量の磁場印加角度依存性は、超伝導体の配向度をパラメータとしたモデルを使って記述される。上記の接合の電流容量の角度依存性も、この同じモデルを使って記述できることが、計算および微細組織観察から明らかになった。 上記の結論から、Bi2223超伝導接合の特性は、線材・バルク材などの従来材料と同じ因子に支配されていることが示唆された。 さらに本年度は、他の高温超伝導体(希土類系)の超伝導接合でも上記の成果の結論が適用できるかどうかについて、実験と考察に着手し始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、Bi-2223超伝導接合の特性(主として電流容量である臨界電流と接合抵抗)の支配因子は、線材やバルク材などの従来材料と同じであることが示唆された。これを元にして、接合特性を自在に制御するプロセスを構築できる準備が整いつつあり、本課題の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えている。 さらに、他の高温超伝導体(希土類系)の超伝導接合でも上記の成果の結論が適用できるかどうかについて、実験と考察に着手し始めた。来年度以降はこの研究でも成果があることが期待されるため、部分的には当初の計画以上に進展しているとも考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究で、Bi-2223超伝導接合の特性の支配因子が明らかとなったため、特性を自在に制御できるプロセスが構築できる準備が整いつつある。今後の研究では、この接合プロセス構築に着手し始める予定である。 また、上記の特性支配因子の解明の成果を、他の高温超伝導体(希土類系)の超伝導接合にも適用できるかどうかについての研究にも着手しつつある。今後はこの研究も並行して進めることで、当初の計画以上に研究を進展させることも目指す。
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