研究課題/領域番号 |
22K14493
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 奨 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (20881056)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 溶融塩法 / シリカ系化合物 / 無機フィラー / 針状粒子 / 溶融塩合成 / コンポジット / 高周波誘電体材料 / 誘電体 / 中空シリカ粒子 / 低誘電率 / 低誘電正接 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、SiO2中空粒子表面に高結晶性シリカ化合物層を形成した新たな高結晶性SiO2中空粒子を合成し、その粒子とポリマーとを複合化することで、超低誘電率・低誘電損失を有するコンポジット誘電体材料を創製する。本申請では、中空粒子を活用したコンポジットの低誘電率化に加え、困難とされているSiO2中空粒子の高結晶化及び表面改質技術を確立することで、キーテクノロジーとされるコンポジットの超低損失化に挑戦する。これらのフィラーおよびコンポジット誘電体が開発できれば、6G/7G通信を実現するための超高速・超高効率伝送を可能とする世界初のミリ波用コンポジット材料の開発となる。
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研究実績の概要 |
本研究は6Gを代表とする高速大容量の無線通信を可能にするため、ミリ波帯電磁波(30~300GHz)の利用に向けた低誘電率、低誘電正接を有する無機有機コンポジット誘電体材料の合成について取り組んでいる。特に、セラミックスフィラーの低誘電率、低誘電損失化に向けたシリカ系化合物の粒子合成について検討しており、とりわけウィルマイト(Zn2SiO4)粒子の合成およびその複合化を図ることで無機有機コンポジット誘電体材料の創製について取り組んでいる。 本年度については、前年度で検討したシリカ系化合物に対する溶融塩合成法のさらなる最適化および中空粒子への適用について検討した。Zn2SiO4粒子の合成には、KClを用いた溶融塩合成法により実施し、粒子形態が針状形状を有するZn2SiO4粒子の合成が可能であることが明らかとなった。また、それらはKClの濃度、焼成温度、焼成時間により、Zn2SiO4の結晶性および粒子形態に影響を及ぼすことが明らかとなった。特に、KClの割合を増加させることで、低温でのZn2SiO4の合成を可能にし、アスペクト比の高い、針状粒子の合成が可能であることが明らかとなってきている。また、焼成温度を増加させることでより結晶性の高い粒子合成が可能であることが確認された。以上より、コンポジット化に向けた低誘電率、低誘電正接を備える針状Zn2SiO4粒子の合成に成功しており、今後はコンポジット化およびその誘電特性評価を実施していくことを想定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、出発原料をZnO、SiO2とし、溶融塩としてKClを用いて合成することで、Zn2SiO4粒子を針状化することが可能であること明らかにしてきている。また、KClの濃度を原料に対して3倍に増加させることで、単相合成を可能とする焼成温度を1000℃から850℃へと低温化させることが可能となっている。一方で、1000℃での焼成条件の場合、高い結晶性を有しており、粒子の低誘電正接化に寄与することが明らかとなってきている。一方、中空粒子への適用については、現状困難な状況にあり、溶融塩合成を用いた合成を行うことで化合物の形成に際し、シリカ粒子の中空形状が崩壊してしまう問題を抱えている。そこで、シリカ粒子の粒径をナノメートルから数十μmオーダーのものへ変更して、形態が保持できるように検討中である。中空シリカ系化合物粒子の合成法確立が遅れており、合成した粒子の複合化についてもやや遅れが生じている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成を実施した溶融塩合成シリカ系化合物粒子(針状Zn2SiO4、球状Mg2SiO4)を用いることで、樹脂材料との複合化を図る。複合化には、粉体PPを用いることで、粒子の分散性の評価およびそのコンポジットの高周波誘電特性について評価を行う予定である。また、シリカ系化合物粒子の針状化による高熱伝導率化、低熱膨張係数化へのコンポジットの熱的特性評価についても検討する予定である。一方、中空シリカ系化合物粒子についても粒子サイズを大きくすることで、形態の保持を可能とした粒子形成を検討し、そのコンポジット化について検討する。これら合成したシリカ系化合物粒子の充填割合を変化させることで、コンポジットにおける誘電特性および熱的特性、機械特性などの組成依存性についても評価を行うことで、フィラー添加の最適化につなげる。また、複合化における理論計算モデルとのフィッティングを行うことで、コンポジット誘電体における物性予測についても検討を行う。
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