研究課題/領域番号 |
22K14502
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片岡 卓也 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 助教 (40909678)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ハイドロキシアパタイト / キトサン / 有機/無機複合体 / 骨補填材 / タンパク質吸着 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,骨疾患の外科治療に伴い生じた骨欠損部位を補填して周囲組織と接合させることで周囲組織を活性化させ,迅速な骨の再生を実現する材料の創製を目的とする。生体毒性を示さず骨欠損の治癒に有用とされるキトサンを骨の主成分であるハイドロキシアパタイト (HA) へ複合化させて,キトサン/HAナノ複合体を創製する。さらに,骨の成長因子をナノ複合体へ担持し骨欠損部位へ補填して周囲組織と接合させ,成長因子を徐放させることで迅速な骨の再生を促す。この時,成長因子は変性を抑制した状態でナノ複合体へ担持し徐放させる必要があるため,成長因子の変性を抑制する表面構造を有するナノ複合体の創製技術を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では,生体骨と類似した特性を持ち,骨疾患の外科治療に伴い生じた骨欠損部位を補填して周囲組織と接合させることで周囲組織 (細胞) を活性化させ,迅速な骨の再生を実現する材料の創製を目的としている。具体的には,生体毒性を示さず骨欠損の治癒に有用とされるキトサンを骨の主成分であるハイドロキシアパタイト (HA) へ複合化させて,生体内の骨と類似した特性を持つキトサン/HAナノ複合体を創製しタンパク質の担持挙動の評価を検討した。 本年度は,湿式法によりキトサン含有量の異なるキトサン/HAナノ複合体を合成した。ナノ複合体には前年度同様に粒径制御のため Mg(II)イオンをHA結晶構造内へ導入している。生体を模倣した環境下(pH 7.4)でのナノ複合体のゼータ電位の結果からキトサン含有量に対応して正に帯電することが判明した。そこでモデルタンパク質として,牛血清アルブミン(負に帯電)を使用したタンパク質の担持挙動を評価した。その結果,タンパク質の担持挙動もゼータ電位に対応する傾向が見られた。比較として合成したキトサンを含まない試料に比してナノ複合体は,2.5倍程度タンパク質の担持量が向上した。一方で,複合体中のキトサンの占める割合が多くなると,タンパク質の担持量とゼータ電位が対応していないことも確認されたためこの原因についても解明していく必要があると考えている。 本年度の研究によってナノ複合体へのタンパク質の効率的な担持がキトサンによって達成できる可能性が示された。今後は,迅速な骨再生のための検討として,担持されたタンパク質の徐放挙動についても評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,湿式法によりキトサンの含有量の異なるキトサン/Mg(II)イオン含有ハイドロキシアパタイト (HA) ナノ複合体を合成しタンパク質の担持挙動の評価を検討した。生体を模倣した環境下(pH 7.4)でのナノ複合体のゼータ電位の結果からキトサン含有量に対応して正に帯電することが判明した。つまりキトサン含有量によって帯電状態を調整できタンパク質と複合体間の静電的な相互作用を制御できる可能性が示された。そこでモデルタンパク質として,牛血清アルブミン(負に帯電)を使用したタンパク質の担持挙動を評価した。その結果,タンパク質担持挙動もゼータ電位に対応する傾向が見られた。比較として合成したキトサンを含まない試料に比してナノ複合体は,2.5倍程度タンパク質の担持量が向上した。複合体への骨形成タンパク質の効率的な担持がキトサンによって達成できる可能性が示された。ゼータ電位の結果を考慮すると、複合体表面でのキトサンの存在が効率的なタンパク質担持につながる可能性がある。今後は,迅速な骨再生のための検討として,担持されたタンパク質の徐放挙動についても評価していく予定である。次年度ではそれに加えて,タンパク質が変性せずに効率的に担持・徐放できる最適な複合体の表面構造の設計指針を見出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ複合体中のキトサンの存在状態については未解明な部分が多いため,その分析が一つの課題になると考えている。ゼータ電位の結果とタンパク質(負に帯電)の担持量には相関する傾向が見られた一方で、複合体中のキトサンの占める割合が多くなると、相関していない部分も確認された。複合体の結晶構造及び形態観察の結果から、複合体中のキトサンの占める割合が多くなると、キトサンは凝集した状態で存在している可能性がある。この結果を考慮して、複合体中のキトサンの構造とタンパク質担持量との関係についても解析を進める予定である。加えて,迅速な骨の再生のための検討として,担持されたタンパク質の徐放挙動についても評価していく。タンパク質が変性せずに効率的に担持・徐放できる最適な複合体の表面構造の設計指針を見出すことも今後の課題になる。最終的には,骨形成を促進するタンパク質をナノ複合体へ担持し骨欠損部位へ補填して周囲組織と接合させ,タンパク質を徐放させることで迅速な骨の再生を促すための技術開発を目指し研究を鋭意推進していく予定である。
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