研究課題/領域番号 |
22K14521
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
石川 弘通 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (80848284)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 熱電変換材料 / シリサイド / 組成制御 / 組織・構造制御 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
地球温暖化に伴う気候変動などの環境問題が深刻化する中、カーボンニュートラルを実現するため、工場や自動車などからの廃熱を直接電力として回収できる熱電変換技術が注目されている。本研究では、資源が豊富で環境負荷の少ないマンガンシリサイド半導体 (HMS)の精密な組成・構造制御に取り組む。固相反応法による低温合成、第3元素添加、ポストアニール処理などの手法を用いて、平衡状態図に基づく熱力学的な視点からアプローチすることで、高性能化のための材料設計指針を確立し、シリサイド系熱電素子の実用化に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
現在、地球温暖化が進行しており、内燃機関や工場のエネルギー効率向上に関する取り組みの中で、廃熱を直接電気エネルギーに変換できる熱電発電が1つの技術として注目されている。既に実用化されている熱電材料には希少金属や有毒元素が使用されているものもあり、資源を安定的に確保できる無害な元素で構成されている熱電材料を開発することが重要である。シリサイド系熱電材料は、地殻中に豊富に存在するシリコンを原料にすることから、既存の熱電材料を代替する材料として有望である。 本研究では、高マンガンケイ化物(MnSix、HMS)に着目し、固相反応による低温合成、第3元素添加、ポストアニール処理などの手法により、平衡状態図に基づく熱力学的な視点から、HMSの高性能化への材料設計指針を確立することを目的とした。本年度は、HMSの微細組織に及ぼすMn/Si組成比およびポストアニール処理の影響、固相反応法によるFeドープn型HMSの合成について検討し、以下の知見を得た。 1. 固相反応法によるMn/Si組成比を制御したMnSix(1.65≦x≦1.85)の合成後、放電プラズマ焼結法を用いて緻密なバルク試料を作製した。走査型電子顕微鏡と電子後方散乱回折を用いて微細組織とHMS相の結晶粒子径を解析した結果、MnSiやSiなどの不純物相は第2相粒子として孤立分散して存在しており、HMS相の平均結晶粒子径は5~8μm程度であった。 2. 1.で作製した試料を石英管に真空封入後1373 K、96時間条件下でポストアニール処理を行った。ポストアニール処理に伴い、HMS相の結晶粒子径の増大と電気抵抗率の低下を確認した。 3. Mn、SiおよびFeの混合粉末を石英管に真空封入し、Mn/Fe組成量を制御することで、固相反応法を用いてn型FeドープHMSの低温合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、HMS熱電半導体のMn-Siの2元系またはドーパントを添加した際の3元系平衡状態図を基にした熱力学的探索手法を用い、熱電特性の高性能化指針の確立を目指している。今年度は、実験面においては、ポストアニール処理がHMSの微細組織に与える影響を調査し、第三元素の添加に着手した。理論面については、新たに設置した計算機に第一原理計算コードのインストールを済ませ、HMSの構造と物性予測の検討を進めており、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度に引き続き、固相反応法により作製したFeドープHMSの熱電特性とポストアニール処理の影響を詳細に検討する。また、第一原理計算の計算環境が整ったので、HMSにFe以外の新規第3元素を添加したモデルの作成についても検討し、それらの安定構造と電子状態を明らかにする。
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