研究課題/領域番号 |
22K14525
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久志本 築 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10846439)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 湿式ボールミル / ADEM-CFD / シミュレーション / 破壊 / 粉体シミュレーション / 超微粉砕 / 粉砕限界 / 再凝集 / 粉砕場解析 / 分散・凝集 / DEM-AB |
研究開始時の研究の概要 |
セラミックスナノ粒子を量産化することで、新たな機能や性能を付与したセラミックス材料の実用化および普及が実現できるが、そのナノ粒子の量産は実現されていない。そこで、微細な粒子を量産可能な湿式ボールミルに着目した。現在、湿式ボールミルもナノ粒子製造は難しく、これは粉砕限界と再凝集のメカニズム解析が実験・シミュレーションのいずれを用いても困難であるからである。そこで本研究では、湿式ボールミル中の粒子の粉砕・凝集挙動を、新たに開発するシミュレーション手法により解析可能とし、粉砕限界と再凝集の発現メカニズムの解明およびその制御方法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
セラミックスナノ粒子の量産化が実現されることで、新たな機能や性能を付与したセラミックス材料の実用化が可能になる。しかしながら、セラミックスナノ粒子の量産化は実現されていない。そこで、微細な粒子を量産可能な湿式ボールミルによるセラミックス粒子のナノ粒子化に着目した。湿式ボールミルにおけるセラミックス粒子のナノ粒子化における課題は大きく二つある。一つは数µmで粉砕が停止する粉砕限界、もう一つは粉砕時に逆に粒子径が増大する再凝集である。加えて、これら粉砕限界と再凝集の抑制方法はおろかその発生メカニズムもよくわかっていない。こうした背景には、湿式ボールミル中の粒子挙動を実験から解析することが難しいことがある。そこで本研究では、湿式ボールミル中の粒子挙動を表現するシミュレーション手法を構築し、湿式ボールミル中の粒子挙動の解析を実現することを目的とする。 本年度は、湿式ボールミル中の粒子挙動を表現するシミュレーション手法を構築するとともに、その粒子挙動の解析を行った。本シミュレーション手法では、液体の運動、媒体ボールの運動、粒子の運動および破壊挙動およびそれら3つの物体間の相互作用の全てをモデル化することで、湿式ボールミル中の粒子挙動を表現した。湿式ボールミル中の粉砕は主に、媒体ボールが衝突するときに起こると考えられる。そこで、構築したシミュレーション手法を用いて、粒子が懸濁するスラリー中で2つの媒体ボールが接近、接触、離反するときの粒子の運動および破壊挙動について解析した。特に、媒体ボールの運動が粒子の破壊挙動に及ぼす影響について体系的に把握するために、媒体ボールの衝突角度と相対速度が粒子の破壊挙動に及ぼす影響を解析した。その結果、媒体ボールの相対速度が速くなることで粒子はより破壊されることと、衝突角度が正面衝突に近づくほど、一度に多くの粒子を破壊できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、本年度までに湿式ボールミル中の粒子挙動を表現するシミュレーション手法を開発することを目的とした。当初計画では本年度までに、湿式ボールミル中の粒子の粉砕・凝集挙動を表現するモデルを構築し、粉砕限界と再凝集のメカニズムの解析を実現することを目的としていた。実際に湿式ボールミル中の粒子の粉砕挙動を解析しようとすると、計算負荷の観点から現実的な時間で目的とする解析が実行できない可能性があることがわかった。そこで本年度では、計算負荷を軽減させるために、粒子が受ける応力状態に応じて粒子の変形や破壊を考慮するモデルと剛体とみなすモデルを切り替える手法を新規に開発した。これにより湿式ボールミル中の粒子の粉砕挙動が解析できるようにした。さらに、新たに開発したモデルを用いて、粒子が懸濁するスラリー中で2つの媒体ボールが接近、接触、離反するときの粒子の運動および破壊挙動について解析したところ、媒体ボールの衝突角度や相対速度といった衝突状況が粒子の粉砕挙動に強く影響を及ぼすことがわかった。特に、今回の解析から媒体ボール同士を正面衝突させるようにすることで、より多くの粒子を一度の衝突で粉砕できることを明らかにした。一方、一般に、より微細な粒子を製造するときには、粉砕機中の媒体ボール同士をずり方向に衝突するように設計することが多い。したがって、粉砕機中の媒体ボール同士を正面衝突させるように設計することでこれまで以上に高速により微細な粒子が得られることが示唆され、設計に資する知見を得ることができた。よって、本研究は当初予定通りではないものの、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度までで、湿式ボールミル中の粒子の運動と破壊挙動を表現するシミュレーション方法を構築し、この手法を用いて実際に粒子の運動および破壊挙動が解析できることを明らかにした。一方、実際の湿式ボールミルにおいてみられる凝集挙動については現在のシミュレーション方法では考慮できていない。そこで、構築したシミュレーション方法に凝集力を追加することで、この凝集挙動も考慮できるようにする。液中の粒子間に作用する凝集力としては、van der Waals力、疎水性相互作用、静電気力が考えられるが、セラミックスで用いられる粒子の多くは親水性であることから、van der Waals力、静電気力だけをまず考慮する。次に、新たに構築するシミュレーション方法の妥当性を確認するために、媒体ボール同士を実際のスラリー中で衝突させたときの粒子挙動を高速度カメラで撮影する実験を行い、その粒子挙動とシミュレーションから得られた粒子挙動を比較する。なお、本実験ではボール同士の接触面に垂直な面における粒子挙動を観察するために、レーザーシート法を適用する予定である。さらに、試験後の衝突点近傍の粒子を採取し、光学顕微鏡によりその形態や大きさ、凝集状態も観察する。これにより、湿式ボールミル中の粒子の運動、破壊および凝集挙動を解析可能なシミュレーション手法を構築する。構築したシミュレーション手法をもとに、湿式ボールミル中の粒子挙動に対し、ボールの衝突状況、粒子径、粒子濃度、Hamaker定数、ゼータ電位などボールや粒子に関する状態、物性、特性が粒子の運動、破壊、凝集挙動に及ぼす影響を解析する。これにより、湿式ボールミルによるナノ粒子製造を阻害する粉砕限界と再凝集が起こるメカニズムを特定するとともに、その抑制方法について検討する。以上から、湿式ボールミルを用いたナノ粒子製造の設計方法を考案する。
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