研究課題/領域番号 |
22K14563
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 将隆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70869544)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 計算化学 / マテリアルインフォマティクス / 第一原理計算 / 合金サブナノ粒子 / 窒素酸化物還元触媒 / 一酸化窒素 / 粒子群最適化アルゴリズム / データベース作成 / 金属サブナノ粒子 / 機械学習 / 密度汎関数理論 |
研究開始時の研究の概要 |
成分・組成比・原子数の条件を偏りなく回帰モデルに取りこむのに十分な数として、百数十程度のニ元金属サブナノ粒子モデルを作成する。作成したニ元金属サブナノ粒子による窒素酸化物の還元反応の反応熱を第一原理計算により求める。 その計算結果をまとめてデータセットとし、それに遺伝アルゴリズムと機械学習的手法を適用して回帰モデルを作成する。 さらに、作成した回帰モデルに対して使用しなかった{成分,組成比,原子数}の組み合わせを適用し、未知のサブナノ粒子の中から触媒として有用なものを探索する。 最後に、優れた触媒となると予想されたサブナノ粒子に対し、電子顕微鏡で実際の構造を観測することで理論計算の妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は第一原理計算と機械学習の組み合わせにより窒素酸化物を還元的に除去できる優れた触媒を探索し、効果的に反応を進行させるニ元金属サブナノ粒子の条件(成分、組成比、原子数など)を明らかすること、および理論計算により得られたこの物性予測の妥当性を実験によって検証することである。探索対象は、申請者のグル-プで既に単一金属サブナノ粒子の合成に成功している第4周期から第6周期に属する金属元素同士の組み合わせとする二成分合金サブナノ粒子とした。また金属イオンが規則正しく錯形成できる配位サイトを導入した申請者のグループ独自の高分子(デンドリマー)で合成できる原子数を参考に、原子数は12原子、組成比は4:8とした。 合金サブナノ粒子の計算モデルは熱力学的に最も安定な構造とし、その構造を大域的に最適化するために第一原理計算と粒子群最適化アルゴリズムの組み合わせを用いた。粒子群最適化アルゴリズムは広域最適解の探索を得意とするメタヒューリスティクスの1種であり、計算結果が初期条件に依存しやすいという第一原理計算の問題点を補うために使用した。第一原理計算には計算化学ソフトウェアVASPを使用した。 成分・組成比・原子数の条件を偏りなく回帰モデルに取りこむのに十分な数として、220種類の無作為的に選ばれた条件で二元金属サブナノ粒子モデルを作成した。さらに、そのうち無作為に抽出した100のサブナノ粒子構造に対する窒素原子・酸素原子・一酸化窒素の最安定吸着構造を第一原理計算で求め、その吸着エネルギーを計算した。得られた吸着エネルギーを、成分・組成比・原子数などの合金サブナノ粒子の特徴を示すパラメータと紐づけながらまとめ、機械学習用のデータベースを構築した。さらに得られた計算モデルの正当性を評価する手段として、走査型透過顕微鏡および高角環状暗視野を用いた金属サブナノ粒子の構造測定の準備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では40種類の二元合金サブナノ粒子の第一原理計算結果に基づいてデータベースを作成し、ケモインフォマティクス的手法により回帰モデルを作成することで未知の二元合金サブナノ粒子の触媒活性を予測することを目指していた。しかし40程度の第一原理計算結果では、触媒活性を高精度で予測する回帰モデルをの作成には不十分であった。そのため訓練データセットのサイズを100に増加させることにしたが、追加分の第一原理計算結果を求めるためにさらなる計算時間が必要になったため当初の研究計画から遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1.100種類の二元合金サブナノ粒子に関する第一原理計算結果を用いて構築されたデータベースから、ケモインフォマティクス的手法を用いてNO触媒反応の反応熱に関する予測を行う。具体的な手法に関してはPLS法など線形アルゴリズムでは十分な精度を達成できないため、SVR法などの非線形アルゴリズムを導入する。また遺伝的アルゴリズムを併用して使用する記述子の組み合わせの最適化も行う。 2.引き続き第一原理計算プログラムVASPを用いて、回帰モデルにより高い触媒活性を示す可能性があると予測された組成の二元合金サブナノ粒子について一酸化窒素還元反応の活性化障壁の高さを計算する。計算には東京工業大学が保有するスーパーコンピュータTSUBAME、筑波大学の計算科学研究センターが保有するスーパーコンピュータCygnusを活用し、7月以降は九州大学の情報基盤研究開発センターにより稼働開始されるスーパーコンピュータ玄海を利用する。 3.2と同時に回帰モデルにより高い触媒活性を示す可能性があると予測された組成の二元合金サブナノ粒子をアークプラズマ蒸着法により実験的に作成し、その構造を高角度散乱暗視野走査透過電子顕微鏡を用いて観測する。観測された電子顕微鏡像から粒子構造を取得し、第一原理計算から得られた情報と比較することで計算結果の妥当性を評価する。
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