研究課題/領域番号 |
22K14566
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小本 祐貴 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (90814210)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 単分子計測 / MCBJ法 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、精度よく単分子伝導を決定する方法の開発を、電極破断過程と伝導度の相関決定、及び電極破断過程の制御の二項目に分割して行う。電極破断過程と単分子伝導度の相関決定は、単分子伝導度領域の伝導度から決定した構造を目的変数とし、どのような電極破断過程のときに、どのような構造をとるか調べる。続いて、電極破断過程にバイアス電圧、電極間距離制御を、機械学習を用い、破断過程を制御する。このようにして単分子接合の伝道を制御する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
単一分子を介した電流計測を行う単分子計測は、分子エレクトロニクスの実現、ナノ物性の計測、新規分析技術の開発など様々な分野において注目を集めている。しかし、単分子計測では、計測に用いる電極構造の制御が不十分であるために、精度よく単分子伝導度を決定できないという課題があり、この問題が単分子計測の実応用への展開を阻んでいる。そこで、本研究では、単分子伝導度を精度良く決定する手法を開発することを目的とする。 本研究では、精度よく単分子伝導を決定する方法の開発を、電極破断過程の解明、及び電極構造の制御の二項目に分割して行う計画である。今年度までの研究では電極構造の制御として、化学修飾を用いた分子識別能の向上を実証し、単分子接合構造決定のための手法として、機械学習を用いた新規解析手法を開発した。化学修飾による電極構造の変調により、従来の手法では識別できない分子を識別することができるようになった。また、機械学習を用いた新規解析手法により会合状態を検出し、さらに会合状態と判定されたシグナルをクラスタリングし、会合状態の種類数を決定した。 今年度の研究により、化学修飾を利用した電極構造の制御及び、単分子接合の状態決定が可能になった。これらの手法を応用によって電極構造を制御し、目的の単分子伝導度をとるための状態を識別することが可能になる。今後、開発した単分子接合の状態識別手法により、単分子接合の伝導状態を明らかにし、破断過程の制御手法を精緻化し、破断過程制御から目的の伝導状態を形成する手法を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までの研究で、単分子計測による分子識別精度を向上させる手法及び、未知の状態を検出、識別する手法を開発した。単分子計測時に電極を化学修飾することによって、電極―分子間の相互作用を変調させることによって、分子の持つ官能基による単分子電流シグナルが変化する。この変化したシグナルを取得し、機械学習分類器に学習させることで、従来識別できなかった単一分子を識別することが可能になった。化学修飾を用いることによって、単分子計測に用いる電極構造を制御及び変調させることによって、単分子計測の識別能を向上させた。本研究成果はChemistry-An Asian Journalに掲載された。 また、水素結合すると考えられる2種類の分子を含む溶液を単分子計測し、得られたシグナルを、機械学習を用いることにより二分子の会合状態を検出する手法を開発した。会合状態を検出するのみならず、会合状態と判定されたシグナルをクラスタリングし、情報量基準を用いて、会合状態の種類数を決定した。このような単分子計測シグナルを識別する手法は、本研究計画で提案した電極構造決定のために応用することが期待される。本研究成果はJournal of the American Chemical Societyに掲載された。 また、現在単分子計測の操作により伝導度変化が小さくなることが確認されつつある。新たな解析手法を用いることによって、電極構造が規定されるようになったことが示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、得られている単分子計測の操作の効果を定量的に評価するために、単分子計測時の操作を正確、精密に制御するために単分子電流計測システムの新たなセットアップを構築する。構築したシステムで単分子計測を行い、単分子計測の電極となるナノギャップ形成に最適な条件を検討する。研究開始当初は計測中における制御により破断過程の電極構造の制御を計画していたが、現在までに、単分子計測前の操作が計測に及ぼす影響が大きそうであるという結果を得ているために、計測途中の制御より計測前の実験条件を重点的に調査する。電流計測データの単分子伝導度領域をこれまでの研究で開発した機械学習を用いた解析手法を応用することにより、接合状態を特定する。破断過程から形成する接合状態を予測する機械学習モデルを構築し、破断過程の制御により、単分子伝導度の制御を行う。また、これまでの研究により化学修飾が電極構造を規定、変調させるために用いることができるとわかってきたため、化学修飾による電極構造制御も必要に応じて行う。
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