研究課題/領域番号 |
22K14572
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平野 満大 香川大学, 創造工学部, 助教 (10911092)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | SUS440C鋼 / アルゴンプラズマエッチング / ナノ突起物 / 炭化物 / 脱炭 / 大気雰囲気熱処理 / 炭素含有量 / 熱処理温度 / 結晶構造 / ステンレス鋼 / 殺菌性 / プラズマエッチング / 熱処理 |
研究開始時の研究の概要 |
有害微生物による産業機器の汚染、衛生環境の悪化に伴う感染症の蔓延を防止するために、アルコールや塩素系薬剤などの殺菌剤が活用されているが、極めて短期間しか効果を示さず、地道に使用し続けなければならない。しかし、常時殺菌性を発現する機能を材料表面に付与することができれば、産業設備の長寿命化や永続的な感染症予防を実現することができる。 本研究では、様々な分野で幅広く応用されているステンレス鋼を対象とし、熱処理とプラズマエッチングを組み合わせることで、常時殺菌性を発揮するナノ突起物の形成および制御を試み、新たな殺菌機能化表面処理技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、アルゴンプラズマエッチング技術によりマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS440C鋼)表面に形成可能な殺菌性ナノ突起物の形状ならびに分布、さらに殺菌性の制御を熱処理工程の導入により実現を目指している。2022年度ではナノ突起物の起点となるクロム炭化物ならびに炭素含有量を熱処理時の脱炭現象を利用するこで変化させるべく、熱処理処理条件を検討した。そこで、2023年度は熱処理したSUS440C鋼をプラズマエッチングし、ナノ突起物の形成ならびにその形状、数密度に与える影響を調査した。 熱処理条件として1000℃、最も炭化物が減少した1050℃を選択した。その後、生材も含めたSUS440C基板をアルゴンプラズマエッチングし、処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した。生材では高さ600 nm、直径200 nmのナノ突起物が形成され、表面全体を覆っていた。一方で、1000℃熱処理材では表面全面に突起物が形成されたものの、その形状は直径が500 nmまでに肥大化した。さらに、1050℃熱処理材では、ナノ突起物は生材、1000℃熱処理材と比較して高さならびに直径は減少し、一部では突起物の未形成部も観察された。 SUS440C鋼の熱処理では、鋼中の炭化物が分解し、炭素が固溶するが、処理時間の経過に伴い固溶炭素が大気中の酸素と反応することで脱炭が進行する。1000℃では熱処理後の冷却過程にて固溶炭素が再度炭化物として析出、凝集したため、プラズマエッチングにおけるナノ突起物の肥大化に寄与したと推察される。一方、1050℃では脱炭の進行に伴い炭化物の再析出が抑制され、突起物形成起点が消失したため、突起物の短尺化、未形成部の発生に繋がったと考えられる。故に、SUS440C鋼の炭化物含有量はナノ突起物の形成、寸法に影響することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は大気雰囲気熱処理を導入することで殺菌性ナノ突起物の制御を目的としている。2023年度は事前の熱処理はアルゴンプラズマエッチングにてSUS440C基板表面に形成されるナノ突起物の形成、形状に影響を与えることを明らかにすることができ、研究計画に掲げた知見を得ることができた。一方で、結晶相が突起物形成に与える影響も追及する予定であったが、昨年度に立ち上げたプラズマエッチング装置の故障、改修により評価には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に得られた研究結果を基に、プラズマエッチングした熱処理SUS440C基板の黄色ブドウ球菌に対する抗菌機能評価を実施する。また、抗菌機能とナノ突起物の形状、数密度の相関性を評価し、より効率的に殺菌性を発揮可能なナノ突起物表面の設計指針に関して知見を得ることを目指す。
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