研究課題/領域番号 |
22K14577
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
西口 茂孝 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任研究員 (50873121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | カドヘリン / 細胞間接着 / 一分子計測 / ダイナミクス / 高速AFM |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高速原子間力顕微鏡 (高速AFM) と分子足場を用いた再構成手法を基盤技術として、細胞と細胞を繋ぐ細胞間接着タンパク質であるカドヘリンのクラスター形成過程および機械刺激と連動した結合構造の変換を、高速・高分解能 (0.3秒以下・2ナノメートル以下) で経時的に観察する手法を開発する。これにより、カドヘリンのクラスター形成機構および機械刺激による結合構造の制御機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、細胞と細胞をつなぐ細胞間接着分子であるカドヘリンのクラスター形成メカニズムと、機械刺激によって誘起される構造変換メカニズムを、高速原子間力顕微鏡 (高速AFM) を用いた液中における分子の直接観察によって明らかにする。令和4年度は、研究計画調書のスケジュールに準じて、カドヘリンのクラスター形成メカニズムの解明に取り組んだ。令和4年度の主な成果として、①細胞間接着を模倣した人工脂質膜間におけるクラスター形成の誘導、②高速AFMを用いたクラスターの形成・解離のダイナミクスの高分解能観察の2点に成功した (詳細については現在までの進捗状況を参照)。上記の実験結果により、相対する脂質膜間におけるカドヘリンのクラスター形成には同一脂質膜上で隣り合うカドヘリン間の結合 (シス結合) が関与することと、クラスターを構成するカドヘリンの一部がダイナミックに構造を変換することで、細胞間隙においてクラスターが成長する方向を制御可能であることを見出した。本研究成果は、カドヘリンのクラスター形成メカニズムを高速AFMを用いた直接観察によってナノメートルのスケールで解明した世界で初めての成果である。本研究成果は、多細胞動物の形態形成に必要不可欠な、カドヘリンのクラスター形成を介した細胞間接着の強化メカニズムの解明に大きく寄与すると考える。その他、現在進行中であるが、過去に報告されたカドヘリンクラスターの結晶構造から生成した疑似AFM像と、液中で取得した実際の高速AFM像を比較することで、より詳細なクラスター形成メカニズムの解析に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、研究計画調書において当該年度の実施を予定していた、(4)-1. 人工脂質膜に固定したカドヘリンのクラスター形成過程の解析に主に取り組み、進捗状況は下記の通りである。
1. 精製したヒスチジン融合カドヘリンとパッチ状に配置したニッケル修飾脂質膜をインキュベートすることで、カドヘリンがクラスターを形成することを見出したが、クラスター形成の頻度が低く、クラスター構造を高頻度に観察することが難しかった。特に、単一の脂質膜のパッチ上でしかクラスターが観察出来ず、相対する細胞間で生じる細胞間結合を模倣するために、2つの脂質膜のパッチ間におけるクラスター形成を誘導することが出来なかった。そこで、カドヘリン間の結合を促進することで、クラスターの形成頻度を高くし、かつ脂質膜のパッチ間におけるクラスター形成を誘導することが出来ないかと考え、野生型の精製カドヘリンの代わりにダイマー間結合の促進変異体であるD1Aをクラスター誘導実験に使用した。D1Aを使用した結果、カドヘリンのクラスター形成が高頻度に生じることを見出し、かつ脂質膜のパッチ間においても、カドヘリンがクラスターを形成することがわかった。 2. 脂質膜のパッチ間に形成されたカドヘリンクラスターの激しい運動のため、微細構造を高分解能で観察することが難しかった。そこで、基板の修飾条件を試行錯誤した結果、アミノシランによる修飾によって、カドヘリンクラスターのダイナミクスと微細構造の高分解能観察を両立可能な条件を見出した。
上記の2つの検討結果から、カドヘリンクラスターが主に、ストランドスワップダイマーと呼ばれるダイマーとS形状のダイマーの2種類のダイマーが混合して形成されていることが示唆され、特定のダイマー構造とクラスターの関連を検証するという当初の研究目標を達成することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、過去に報告されたカドヘリンクラスターの結晶構造を用いて疑似AFM像を再構成し、実際の高速AFM像と比較することで、結晶構造と高速AFMで観察した液中構造間の差や、クラスター形成に重要なアミノ酸残基の特定を目指す。また上述の検討と並行して、令和5年度に実施を予定している、(4)-2. カドヘリンの複合体の機械刺激応答特性の解析にも取り組む。
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