研究課題/領域番号 |
22K14593
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
埋田 真樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 博士研究員 (90914060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バーネット効果 / 力学回転 / 磁性流体 / スピントロニクス / 磁性ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
バーネット効果は磁性体を回転させるとスピン角運動量と力学的角運動量が結合し、物質が磁化する現象である。本研究では、バーネット効果の対象を従来の金属塊や粉末(固体)から磁性ナノ粒子を含んだコロイド分散系(液体)に拡張する。高感度磁力計と液体の高速回転技術を構築する。非慣性系の物理と磁性ナノ粒子の並進・回転自由度を組み合わせることで、回転流体中で予期される粒子の自転現象を力学的整流効果として解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、磁性体中の角運動量と力学回転の結合現象であるバーネット効果を用い、予備実験で発見した非慣性系の流体中に分散したコロイド粒子に生じる付加的回転現象を解明することを目的とする。R4年度は、バーネット効果の測定に用いる回転装置の改良とそれを用いた再現実験、さらに溶媒凍結実験に取り組んだ。 回転装置は、温調した高圧ガスによって試料を封入したローターを回転させ、磁化した試料からのnTオーダーの漏れ磁場を試料横のフラックスゲートセンサーによって検出する。改良点として、回転誘起磁場と同じnTオーダーの極低磁場領域において帯磁率が測定可能な系を考案し、回転装置に組み込んだ。具体的には、ローターと同配置で試料を挿入したソレノイドコイルに矩形電流を印加し、漏れ磁場から帯磁率を換算する手法を開発した。改良された装置でバーネット磁場の回転周波数依存性を測定し、装置の性能評価を行った。結果、1)磁性流体の溶質であるFe3O4ナノ粒子のg因子を同定し、2)予備実験同様、磁性流体において付加的回転分を反映した信号の増大を発見した。1)によって先行研究で報告されたFeCo-MgF2と同様、3d遷移金属化合物であるFe3O4においても軌道磁化の寄与がバーネット効果によって検出可能なことが明らかになった。 また、再現性が取れたため、本装置を用いて溶媒の流動点未満の170Kでバーネット効果測定を行い、信号強度が粉末試料と同程度にまで抑制されることを発見した。これは溶媒の凍結によって付加的回転が失われたことを意味し、付加的回転が液体中の粒子の並進自由度を起源とする当初の主張を支持する結果である。 以上、高感度バーネット効果測定装置の開発と磁性流体中の付加的回転の実測及び一部系統測定まで達成した。本成果の一部は、Review of Scientific Instrumentsに論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り回転装置を発展させ、同装置内で極低磁場領域における帯磁率の検出ができる測定環境を整備した上で、信号の再現性及び予定していた系統測定の一つである温度依存性まで一通り確認したため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では同装置を用いて系統測定を進める。具体的には、バーネット効果測定を炭化水素油磁性流体の濃度依存性と各種溶媒について行い、回転周波数依存性からバーネット磁場強度の変化を調べる。また、系統測定時の比較条件として温度、濃度、溶媒種の密度、粘度の各種パラメータが回転流体中のナノ粒子の運動に与える影響の基礎的知見を得るため、慣性力を考慮したLangevinモデルと分子動力学シミュレーションを併用して評価する。
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