研究課題/領域番号 |
22K14598
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土師 将裕 東京大学, 物性研究所, 助教 (50805869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | スピン分解走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡 / 強磁性共鳴 / 薄膜磁性 |
研究開始時の研究の概要 |
磁性体デバイスの集積化に伴い、磁性体のナノサイズ効果を無視することができなくなりつつある。したがって、ナノサイズ磁性体の状態を検出することが重要となる。スピン分解走査トンネル顕微鏡は、磁化状態をナノスケールで検出できる有用な手法であるが、静的な情報しか検出することができない。そこで高周波電磁場による強磁性共鳴に着目した。強磁性共鳴を引き起こさせると短時間磁化状態を制御することができ、結果として動的特性を検出することができる。本研究では、強磁性共鳴を組み合わせることで磁性体の動的な特性をナノスケールで検出することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究はスピン分解走査トンネル顕微鏡を用いて、ナノサイズ磁性体の磁気共鳴測定及びその操作を目指すものである。 昨年度は主に、試料作製に取り組んだ。当初は鉄及びコバルトの合金を用いたナノサイズアイランド構造を用いる予定であった。しかしながら、印加可能なマイクロ波の上限周波数と照らし合わせた場合、磁気異方性が想定よりも高く、実現困難であることが判明した。そこで、より磁気異方性の小さなファンデルワールス磁性体である3臭化クロムもしくは3塩化クロム薄膜を用いるよう方針を変更した。 超高真空内蒸着装置の作製を行い、金属や半導体など様々な基板上に成長させた。本研究により、最も高品質な薄膜を作製するためには、炭化珪素上に形成された数層グラフェンを用いることが最適であることを見出した。 本年度は、まずスピン分解顕微鏡用探針を用いて、3臭化クロム単層薄膜及び3塩化クロム単層薄膜の磁気特性の測定を行う。面直及び面内の磁化曲線から、磁気容易化軸及び異方性磁場の大きさを測定する。測定した異方性磁場の大きさから、共鳴周波数の見積もりを行う。先行研究から推測すると、10GHzから15GHzの周波数で共鳴が引き起こされることが期待される。 マイクロ波印加のために、高周波対応ケーブルを極低温走査トンネル顕微鏡システムに組み込む必要があるが、そのセットアップは既に完了しているため、上記の磁化測定が終わり次第、マイクロ波印加による強磁性共鳴観測に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は主に試料作製に取り組んだ。当初は鉄及びコバルトの合金を用いたナノサイズアイランド構造を用いる予定であった。しかしながら、印加可能なマイクロ波の上限周波数と照らし合わせたとき、磁気異方性が想定よりも高く、共鳴観測の実現が困難であることが判明した。そこで、より磁気異方性の小さな薄膜の探索を行った。その結果、ファンデルワールス磁性体であるCrBr3もしくはCrCl3薄膜を用いるよう方針を変更した。先行研究から推測すると、10GHzから15GHzの周波数で共鳴が引き起こされることが期待される。 3臭化クロム及び3塩化クロム用の超高真空内蒸着装置の作製を行い、金属基板や半導体基板など様々な基板上において成長を行った。金属基板では、2臭化クロムが選択的に形成されることを見出した。一方で、炭化珪素上に形成された数層グラフェン上に成長させると高品質な薄膜形成が可能なことが判った。 また、今後に向けてスピン偏極探針の作製が必要があるが、その作製は完了しており、標準試料であるタングステン上の鉄薄膜を用いた探針評価も完了している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、3臭化クロム単層薄膜及び3塩化クロム単層薄膜の磁気特性の測定をスピン分解顕微鏡用探針を用いて行う。使用装置は面直及び面内に磁場印加が可能であるため、両軸の磁化曲線から、磁気容易化軸及び異方性磁場の大きさを測定することが可能である。測定した異方性磁場の大きさから、共鳴周波数の見積もりを行う。 上記の磁化測定が終わり次第、マイクロ波印加による強磁性共鳴観測に取り組む予定である。
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