研究課題/領域番号 |
22K14607
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井上 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (90843342)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | チタン酸ストロンチウム / 超伝導 / エピタキシャル薄膜 / 歪制御 |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導体は量子情報処理等、次世代の情報処理技術に不可欠な構成要素になりつつある。チタン酸ストロンチウムは半導体でありながら超伝導を示すため、外場で特性を制御する超伝導エレクトロニクス素子として期待できる。最近、チタン酸ストロンチウムを元素置換したり歪ませたりして強誘電性を誘起すると、超伝導転移温度が上昇することが報告された。本研究では、超伝導体の歪を制御しながら超伝導状態を定量的に評価することで、強誘電性と超伝導状態の関係性を明らかにすることを目的にする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に作製条件を最適化したチタン酸ストロンチウム薄膜について、ニオブドープを行った試料を作製し、超伝導の観測を試みた。ニオブドープ濃度は0.5 wt.%、膜厚は70 nmとし、まずホール効果の測定により電子密度を求めると、8.0×10^19 cm^-3となった。約50%のドーパントが活性化されていることになる。希釈冷凍機により電気抵抗測定を行ったところ、温度239 mKで超伝導転移を観測した。温度70 mKにおける臨界電流は約6 μAとなったことから、ほぼ薄膜全体が超伝導状態になっていると考えられる。 フリースタンディングなチタン酸ストロンチウム薄膜の歪による超伝導制御に向けて、PLD法により犠牲層薄膜の成膜条件最適化を行った。犠牲層材料の多結晶ターゲットを作製し、基板温度、酸素分圧、アブレーションレーザーの入射光強度を変化させながら成長条件を探索したところ、基板温度700 ℃、酸素分圧10^-5 Torrでエピタキシャルな犠牲層薄膜を得た。X線回折測定では、c軸配向した犠牲層の明瞭な回折ピークが見られ、原子間力顕微鏡による表面平坦性の測定では、チタン酸ストロンチウム単結晶基板に起因した明瞭なステップテラス構造が観測された。その場高速電子線回折測定では、二次元成長モードを示唆するストリークパターンと共に、レイヤバイレイヤ成長に伴った回折強度の振動が観測された。一方、基板温度600 ℃以下、あるいは低酸素雰囲気下では、エピタキシャルな犠牲層薄膜は得られないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超伝導状態の観測と犠牲層薄膜作製条件の最適化を行っており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に引き続き、歪による超伝導制御に向けて、犠牲層薄膜の上にSrTiO3薄膜をエピタキシャル成長することで、フリースタンディングなSrTiO3薄膜の作製に取り組む。電子ドープを行ったり、歪を印可することによって、超伝導状態を観測・制御することを目指す。
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