研究課題/領域番号 |
22K14630
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
平田 悠歩 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 博士研究員 (30881057)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 電子挙動解析 / モンテカルロシミュレーション / 放射線計測 / 放射線検出器 / 電子飛跡構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
計算機シミュレーションを用いた放射線検出器の応答予測は放射線計測の高精度化や、妥当性検証のため必要不可欠である。多くの検出器は放射線により発生する電荷キャリアを介して放射線を計測しているため、検出器応答の正確な予測には電荷キャリアが生成するまでの過程を理論的に計算する必要がある。そこで、種々の検出器材料を対象として、電子の挙動を細かく追跡できる電子飛跡構造解析コードを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では放射線計測の高精度化を目指し、放射線が検出されるまでの詳細な過程を計算機シミュレーションにより解明するためのモデル開発を行っている。検出器に入射した放射線は、相互作用により多数の低エネルギー電子を生成し、これらの低エネルギー電子が電気信号や発光に変換され検出される。そのため、検出器応答を評価する際には、放射線から発生する低エネルギー電子の挙動解析が重要である。そこで、電子・重イオン輸送計算コード(PHITS)の機能として、検出器を構成する物質中の電子線挙動をナノスケールかつ極めて低いエネルギーまで追跡可能な飛跡構造解析コードを開発している。今年度は検出器として多く利用されている半導体Siについて、電子線の挙動を詳細に解析できる電子線飛跡構造解析コードを開発し、PHITSに実装した。一方で、本機能は詳細な計算が可能である反面、物質ごとに相互作用断面積データを作成する必要がある。そこで、様々な物質から構成される一般の検出器の応答解析に対応するため、物質ごとにデータ整備を行った電子線飛跡構造解析より精度は劣るが任意の物質に対する電子の断面積を基礎的な物性値から簡易的に計算できる手法を開発した。開発した手法では電子の束縛エネルギーやバンドギャップエネルギーなどから、物質中の電子の相互作用ごとの断面積を計算することができる。この手法により計算した断面積とPHITSを組み合わせてSi中の電子の飛程を計算した結果、実験データを用いた電子線飛跡構造解析計算機能による計算結果と一致した。また、付与エネルギー当たりの発生電子数を計算したところ、半導体物質に対しては10%程度の精度で実験値を再現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は全体として計画通りに進んでいる。今年度は、検出器として重要な物質である半導体Siに対する電子線飛跡構造解析モデルをPHITSに実装し、Si検出器の応答の詳細な解析が可能となった。さらに、任意の物質に対して検出器応答の解析が行えるよう、新たな断面積計算手法を開発したことで、幅広い物質に対応する検出器の応答解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した断面積計算手法を用いた電子線飛跡構造解析コードは、物質の絶縁体物質に対しては付与エネルギー当たりの発生電子数の計算精度が低下した。そこで、絶縁体物質でも精度よく付与エネルギー当たりの発生電子数が計算できるモデルを開発する。さらに、PHITSに実装されている任意物質に対する粒子線飛跡構造解析コードと開発したコードを組み合わせて、粒子線を照射した際の検出器応答を評価できるようにコードを改良する。また、検出器として有用なSiCなどの特定の物質については、個別に相互作用断面積データを整備し、精度が高い専用の電子線飛跡構造解析コードを開発する。 蛍光体における発光は、放射線が電子にエネルギーを分配し、励起電子に変換されることで観測されるため、蛍光体の応答評価には励起電子が発生するまでの過程を調査することが重要となる。そこで、開発した飛跡構造解析コードを用いて蛍光体中で放射線が電子を発生させる過程を計算し、放射線が入射してから発光に至るまでの過程を詳細に解析する。 また、実際の検出器に対して放射線照射実験を行い、検出器の応答を測定し、開発した飛跡構造解析コードの計算結果と比較することで開発した機能の有用性を実証する。
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