研究課題/領域番号 |
22K14631
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
樋川 智洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (90783316)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 誘電分光 / 複素誘電関数 / 放射線分解 / スパー / 抽出分離 / 燃料サイクル |
研究開始時の研究の概要 |
燃料サイクルにおける放射性核種の化学分離工程で重要となる、溶液中で放射線が引き起こす現象を解明するには、放射線で生成する活性種の初期空間分布が重要となる。そこで本研究は、溶液がもつ固有の物理量である複素誘電関数に着目して、放射線により発生する活性種の初期空間分布の理論予測を目指す。そのために放射性核種の化学分離に用いられる有機溶媒を対象として、誘電分光研究を実施する。溶液中の分子が、放射線により発生した活性種に対してどのように応答し、活性種が持つ運動エネルギーをどのように吸収するのかを明らかにすることで、活性種の初期空間分布を決定するスパーの形成メカニズムの解明に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究期間において、放射性核種の抽出分離に用いられる有機溶媒(抽出溶媒)を対象とした誘電分光研究を実施することで、放射線により生成する活性種と抽出溶媒中の分子との相互作用を明らかにし、スパー形成メカニズムの解明を目指す。 2023年度は、前年度に整備した誘電分光測定系を用いて、抽出溶媒中の分子のマイクロ波や中長波領域の複素誘電関数データを取得した。また放射光を用いた吸収分光や光電子分光実験を実施し、抽出剤の電離や励起に係る断面積についての情報も得た。これらの実験検討に加え、抽出溶媒中の分子と荷電性反応活性種との相互作用を解明するために、複素誘電関数に基づいて反応拡散をシミュレートする手法の開発に取り組んだ。複素誘電関数から見積もられる誘電率の時間変化は、放射線により生成した活性種への誘電応答を表している。そこでこの誘電応答が反応拡散過程における活性種同士の反応に及ぼす影響をシミュレーションにより検討したところ、誘電応答時間と誘電応答しない場合の反応時間時間を比較することで、スパー過程を特徴づけられる可能性が示唆された。この検討結果について2024年4月現在論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた抽出溶媒中の複素誘電関数の取得および複素誘電関数を利用した反応拡散過程のシミュレーション手法開発は当初の計画通りに進んでいる。進捗状況はおおむね順調である。ただしスパー形成メカニズムの解明には活性種の熱化過程の理解が不可欠であるが、これまでに実施した放射光実験では真空中での抽出剤分子そのものの電離や励起の評価にとどまっている。次年度は引き続き溶液中での電離や励起断面積を取得するために実験手法の溶液系への拡張を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き抽出溶媒中の電離や励起に係る断面積データの取得に取り組むとともに、スパー形成メカニズムにおける活性種の熱化過程や活性種間のクーロン力による再結合過程を明らかにし、スパー形成メカニズムの全体像の解明に貢献する。
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