研究課題/領域番号 |
22K14634
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大田 優介 名古屋大学, 環境学研究科, 特任助教 (60909274)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 岩石物理学 / 硫化鉱物 / 比抵抗 / 海底熱水鉱床 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、海底熱水鉱床における硫化金属鉱物の産状に即した岩石物理モデルを構築することで、物性値に基づく資源量評価を目指すものである。自然状態では硫化金属鉱物は互いに連結してクラスター状になっているが、クラスター化した硫化金属鉱物が示す電磁気学的性質と、そのスケール則などに関する十分な研究例はこれまでに存在しない。本研究では、細粒の硫化物が互いに連結することで飛躍的に導電特性を増大させるメカニズムを調査するとともに、その異方性や物理探査スケールでの表現まで検討する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、岩石中の過剰導電物質として他の岩石構成要素と比して圧倒的な良導電性を持つ硫化鉱物について、硫化鉱物の岩石中の存在形態によって岩石全体の電磁気学的性質に与える影響を調査するものである。既往研究では硫化鉱物同士が相互作用しない等粒分散型のモデルサンプルが提案され、数値計算、人工試料による室内試験など様々な検討が行われてきたが、現実の地質構造における硫化鉱物の沈澱は等粒子であるというよりもむしろ、岩石亀裂内部に沈殿した硫化物鉱脈や海底噴気性塊状硫化物が主流であると考えられる。実際に、塊状硫化鉱物や脈状硫化鉱物を含む天然の岩石試料では、既往理論に従わない試料も確認されている。本研究ではこれらのようなドラスティックな鉱物配置を考慮し、脈状硫化鉱物を内包する多孔質岩石内部の電流シミュレーションモデル生成と、塊状硫化鉱物の配置による電流集中の測定のための人工試料作成を行い、それぞれの計算および実験を実施した。本年度の成果としては、電流シミュレーションの実装が完了し、室内試験の実験データを取得できたほか、実際に硫化鉱物の電流方向への直線的連続性・配置効率によって電気特性が大幅に変化する様子が観察できた。また、硫化鉱物が電流方向に対して直線的に繋がることが可能な場合、すなわち硫化物鉱脈が電流方向と平行である場合には、全体との体積比0.05程度のごく少量の硫化鉱物でも岩石全体の導電率を数倍程度向上させうることも確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
数値計算による岩石内部の電流経路の可視化など、想定以上の多くの成果を挙げることができた。特に脈状硫化鉱物の導電性や充電率といった重要な物性情報を、いくつかのランダムパラメータに基づいて計算できたことは重要な成果である。本研究では多孔質岩石を生成したのち、岩石内部に亀裂を生成し、この亀裂内に硫化物を充填させることで脈状硫化物を生成しているが、亀裂は楕円体の3軸比と1つの軸長を固定パラメータとして与えており、そのため、塊状硫化物を包括した統計的モデル化は容易い。本研究はデジタルロック的手法のみならず実験的にも硫化鉱物の振る舞いをたしかめており、脈状硫化物に対しても室内試験を実施しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
脈状硫化鉱物の様々な状態を想定したシミュレーションは、特に重要な有限要素法のスパース化と高速処理に高性能なグラフィックユニットを用いても数時間程度計算時間が必要である。そのため、本年度も様々なパラメータを変化させたシミュレーションを実施していく予定であるが、それに並行して、計算のリファクタリングも行っていく。 また、脈状硫化鉱物を含めて、室内試験による実証的確認も重要な課題として今後実施していく予定である。具体的には、本年度の成果をうけて、ケーススタディとして利用できる現実の地質構造およびサンプルを用いた室内試験を実施、本研究を実証的研究へと発展させ2023年度中に論文執筆・投稿を行う予定である。
|