研究課題/領域番号 |
22K14652
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
甲田 信一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10790404)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 体内時計 / 概日リズム / シアノバクテリア / KaiB / 最小エネルギー経路 / 反応モデル |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアの体内時計はわずか三種のタンパク質(KaiA, KaiB, KaiC)で構成されている。この振動子が刻む時間情報を他の部位に伝達する出力系については、関係する遺伝子およびタンパク質が明らかにされてきたが、その分子的な機構の多くは未解明である。本研究は出力系の中でも特にKaiB-KaiCおよびSasA-KaiC複合体形成に焦点を絞り、これらが結合サイトを共有しているにも関わらず順序だって行われる分子的な機構を理論的に明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は二つの安定状態をつなぐ最小エネルギー経路を計算的に求める高効率なアルゴリズムを開発した。以下、その概要である。 一般に自然科学における状態変化では、系はエネルギー的に安定な状態から不安定な状態を経て別の安定状態に移り変わる。その時系は極力エネルギーが低い状態を経由しようとする。これは我々が歩いて山を越える時にできるだけ標高の低い峠を通るようなものである。したがって極力エネルギーの低い状態を経る最小エネルギー経路を知ることは重要である。例えば本研究課題で着目しているシアノバクテリアの時計タンパク質KaiBは安定な二つの異なる折り畳み構造を持つが、そのふたつの安定状態がどのような経路で結ばれているかは未だよく理解されていない。 さて計算的に最小エネルギー経路を求める手法はこれまで様々考案されてきたが、より計算量が少ないほうが望ましい。現在広く用いられている手法は系に働く力を修正し、その修正された力が経路上のすべての点でゼロになる経路を探すが、そのゼロ点探索はやや効率が悪い。そこで本研究では最小エネルギー経路探索を等価な最小化問題に書き換え、さらに先端的な最小化問題ソルバを適用した。結果としては、計算の安定性の向上(計算に失敗するケースが減少)および計算効率の顕著な上昇を果たした。この成果については学会(理論化学討論会)にて発表を行った。詳細は近日中に専門誌に投稿する。また今後は、今回開発した手法を用いてKaiBの構造変化などを詳しく調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は二つの安定状態を遷移状態を経てつなぐ最小エネルギー経路を計算的に求める高効率なアルゴリズムを開発した。本研究課題で着目しているシアノバクテリアの時計タンパク質KaiBは安定な二つの異なる折り畳み構造を持つが、そのふたつの安定状態がどのような経路で結ばれているかは未だよく理解されていない。今回のアルゴリズム開発はこのような複雑な系への応用を念頭に行った。 現在広く用いられている手法は経路上で計算された系に働く力を修正し、その修正された力がゼロになる経路を探す。しかし、そのゼロ点探索はやや計算効率が悪い。そこで本研究では最小エネルギー経路探索を等価な最小化問題に書き換え、さらに先端的な最小化問題ソルバを適用することで大幅な効率化を実現した。この成果は近日中に専門誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、ミクロスコピックな研究として、分子動力学シミュレーションを用いてKaiBおよびSasAとKaiCの複合体の安定性を見積もる。この際、KaiBの構造変化については開発した最小エネルギー経路探索アルゴリズムを応用したい。一方で、マクロスコピックな研究である反応モデル開発は近く着手する予定である。
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