研究課題/領域番号 |
22K14659
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
武藤 克也 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 講師 (10760605)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | フォトクロミズム / ビラジカル / キラル / ヘリセン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、光照射により可逆的にビラジカルを生成する高速フォトクロミック分子に、らせんキラリティを有するヘリセンを架橋基として導入することで、光スイッチ機能を有し、磁場方向を認識できるラジカル解離型フォトクロミック分子の創生を目的とする。光照射によりヘリセン骨格上にビラジカルを非局在化させることで、らせん方向に依存した電子スピン状態を生み出す。また、光増感剤を用いて三重項ビラジカルを生成し光照射後に熱平衡状態へ至る過程のキラリティ依存性を観測することで、らせん構造に基づいてスピンを整列できる分子設計指針を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
有機ビラジカルは、化学結合の形成や自然界における地磁気の認識に関わっているだけでなく、分子磁性材料を開発する上でも重要である。近年、磁場の向きとキラリティに依存してスピンの選択性を生み出す例として、らせんキラリティが注目されている。しかし、らせん型有機ビラジカルの電子スピン状態については詳細な報告例が無く、適切な分子設計指針は得られていない。本申請研究では、光照射によって可逆的にビラジカルを生成するフォトクロミック架橋型イミダゾール二量体に、らせん構造に由来するキラリティを持つヘリセンを架橋基として導入することで、光スイッチング機能を有するキラル有機ビラジカルの創生を目的とする。 実際に設計・合成した「ヘリセン架橋型イミダゾール二量体(helicene-ImD)」は、光学分割によりヘリセンのらせん方向に由来する光学異性体を単離することができた。各々の光学異性体に紫外光を照射するとC-N結合が解離し過渡種であるビラジカルが生成した。ビラジカルの生成はESR測定により確認された。また、ナノ秒レーザーフラッシュフォトリシスを用いた過渡吸収スペクトル測定より、ビラジカルは波長500 nmと800 nmに極大吸収を示し、吸光度時間減衰曲線よりビラジカルの半減期は298 Kにおいて29 msと求められた。これらより、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体は高速フォトクロミズムを示すことを明らかにし、高速フォトクロミズムを用いたキラル磁性スイッチの足掛かりとなる分子設計指針を確立することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的とする「ヘリセン架橋型イミダゾール二量体(helicene-ImD)」を実際に合成し、ナノ秒レーザーフラッシュフォトリシスを用いた過渡吸収スペクトル測定より、高速フォトクロミック特性を明らかにすることが出来た。また、光照射により生成するビラジカルの存在をESR測定から確認した。これらより、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体は高速フォトクロミズムを示すことを明らかにし、高速フォトクロミズムを用いたキラル磁性スイッチの足掛かりとなる分子設計指針を確立することができたといえ、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
[7]ヘリセンや[9]ヘリセン骨格により架橋されたイミダゾール二量体を設計、合成し、架橋基であるヘリセンのらせん構造と高速フォトクロミック特性の相関関係を明らかにする。また、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体のエナンチオマーに対して、高速フォトクロミック特性や、ビラジカルの交換相互作用の磁場依存性を検討する。
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