研究課題/領域番号 |
22K14663
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福井 識人 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70823277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 有機化学 / 構造有機化学 / 芳香族炭化水素 / HOMO-LUMOギャップ / 機能性π共役分子 / 近赤外応答 / 安定性 / 異種電子構造の調和 / 近赤外吸収 |
研究開始時の研究の概要 |
構造的・電子的に新規な芳香族炭化水素の創出は機能性π共役分子の創製に重要である。とりわけ、狭いHOMO-LUMOギャップ(HLギャップ)を有する芳香族炭化水素の創出は、電子の授受の両方に優れた電子材料や近赤外領域で応答する色素の創製につながる。しかし、狭いHLギャップを示す既存分子の多くは反応性が高く、これらを安定に取り扱うには嵩高い周辺置換基による保護を必要とする。本提案では、この“狭いHLギャップと安定性の両立”という挑戦的課題を、近年申請者が見出した『異種電子構造の調和』という視点を実現する分子設計指針の確立によって克服することを目指す。
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研究実績の概要 |
構造的・電子的に新規な芳香族炭化水素の創出は機能性π共役分子の創製に重要である。とりわけ、狭いHOMO-LUMOギャップ(HLギャップ)を有する芳香族炭化水素の創出は、電子の授受の両方に優れた電子材料や近赤外領域で応答する色素の創製につながる。しかし、狭いHLギャップを示す既存分子の多くは反応性が高く、これらを安定に取り扱うには嵩高い周辺置換基による保護を必要とする。そのため、高密度な集積が求められる電子材料や生体内のような夾雑系で機能する色素としては本質的には適さない。本提案では、この“狭いHLギャップと安定性の両立”という挑戦的課題を、近年代表者が見出した『異種電子構造の調和』という視点を実現する分子設計指針の確立によって克服することを目指した。 具体的には、当該年度では、前年度までに代表者が創出したインデノペリレンという狭いHLギャップと安定性の両立する炭化水素に着目し、そのπ拡張類縁体であるインデノナフトペリレン、インデノテルリレンならびにジインデノテルリレンを新たに創出した。得られた分子はいずれも可視光全域を吸収するほど狭いHLギャップを示した。特にジインデノテルリレンの吸収は近赤外領域に及び、その末端は920 nmに及んだ。そこで、得られた分子の構造とHLギャップの相関を解明することで『異種電子構造の調和』を実現する分子設計指針の具体化を目指した。その結果、リレン類の周辺部に5員環を縮環させる、という分子設計が狭いHLギャップと安定性の両立に効果的であることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、前年度までに代表者が創出したインデノペリレンという狭いHLギャップと安定性の両立する炭化水素に着目し、そのπ拡張類縁体を新たに創出した。得られた分子の構造物性相関を解明することで『異種電子構造の調和』を実現する分子設計指針の具体化を目指した。その結果、リレン類の周辺部に5員環を縮環させる、という分子設計が狭いHLギャップと安定性の両立に効果的であることを解明した。 インデノペリレンのπ拡張類縁体の創出は申請書において提案したものである。当該年度はこの提案の実現に成功した。この成果については既に国際学術誌に報告している。 以上のことから本提案はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は申請書記載の提案通り、初年度に創出した分子を機能性材料として展開することを目指す。 1つ目では、電子の授受に優れ、かつ立体障害となる置換基を持たないという長所を活かし、有機電子材料としての利用を目指す。具体的には、まずは真空蒸着法によって薄膜を作製し、その移動度を計測することで、両極性有機半導体としての性能を評価する。仮に真空蒸着によって薄膜が与えられなかった場合は分子の周辺にアルキル鎖を導入し、溶解性を向上させ、溶液プロセスによる成膜を検討する。また、臭素などによる化学ドーピングや、テトラチアフルバレン(TTF)やテトラシアノキノジメタン(TCNQ)との共結晶化により、金属的な導電性が発現するかも検証する。 2つ目では、安定性が高く、近赤外光に応答し、周辺修飾可能であるという長所を活かし、生体向けの機能性色素としての利用を目指す。具体的には、周辺に水溶性を向上させる周辺置換基を導入し、バイオイメージング材料へと誘導する。また、周辺に臭素などの重元素を導入して項間交差を促進すれば、光線力学療法の増感剤としても活用できると期待している。
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