研究課題/領域番号 |
22K14665
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
行本 万里子 京都大学, 化学研究所, 助教 (70822964)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 高反応性化学種 / 高周期14族元素 / 16族元素 / 立体保護 / アミド / 互変異性 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内のアミド結合は、環境に応じてアミド型とイミン型の両方の構造をとり、このケト-エノール型の互変異性化現象は生命活動の維持において重要な役割を担っている。互変異性化は、有機化学の基本事項であるが、多重結合に高周期14族元素を含む場合、合成上の困難さから全く未解明の現象である。本研究では、重いアミド類、重いイミノール類をそれぞれ合成・単離し、系統的比較を行うことでその化学結合の性質を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
互変異性化反応は、有機化学における基本反応の一つであるが、多重結合に高周期14族元素を含む場合、合成上の困難さから全く未解明の現象である。本研究では、重いアミド類と対応する重いイミノール類の合成・単離を行い、その互変異性化反応の有無などの化学結合の本質を調べ、第2周期元素の化学の普遍性・特殊性を明らかにすること、第2周期元素の化学の概念の拡張を行うことを目的している。 2022年度は重いアミド類としてゲルマニウムーカルコゲン間二重結合化学種の合成を行なった。本研究で目的とする化合物は、高反応性の化学結合を有するため、かさ高い置換基を用いる速度論的安定化を利用して立体保護を行う。高反応性である重いカルボニル結合を保護するためにゲルマニウム原子上にかさ高い芳香族置換基を導入した。また、かさ高い置換基を有するNH基としてアダマンチルアミノ基またはトリプチシルアミノ基を選択し、骨格構築を行った。導入した置換基の立体保護効果により重いゲルマンアミド類の原料となるNH置換ゲルミレンを不活性ガス雰囲気下で熱的に安定な固体として高収率で得ることができた。アダマンチル基を導入した系では、ゲルマンアミド類の合成・単離には立体保護が不十分であることが明らかになった。トリプチシル基を用いた骨格では、単離したゲルミレンと16族元素導入試剤との反応からゲルマンチオアミド(ArRHNGe=S)、ゲルマンセレノアミド(ArRHNGe=Se)、ゲルマンテルロアミド(ArRHNGe=Te)への誘導を行い、対応する重いゲルマンアミド類を高収率で得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒素上のかさ高い置換基として、まずアダマンチル基を導入した骨格を用いた検討を行った。ゲルマンアミド類の前駆体となるゲルミレンは、問題なく合成・単離することができたが、カルコゲン化を行うと対応するゲルマンアミド類の二量体が得られることが明らかになった。そこで、窒素上に導入する置換基をトリプチシル基へ変更したところ、重いゲルマンアミド類(ArRHNGe=Ch, Ch = S, Se, Te)を合成・単離することができた。しかしながら、トリプチシル基を導入した骨格においても酸素類縁体(ArRHNGe=O)の合成・単離には至っていないため、さらにかさ高い置換基の導入などの工夫が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲルマンアミド(ArRHNGe=O)については、トリプチシル基を導入した系においても二量化反応が進行することが明らかになったため、かさ高い芳香族置換基を窒素上に導入するなど、より有効な立体保護効果が得られる骨格構築を行う。 合成・単離に成功した重いゲルマンアミド類については、塩基を用いたNHプロトンの引き抜き反応をはじめとする反応性の検討を行う。
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