研究課題/領域番号 |
22K14681
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鹿又 喬平 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (30880447)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ピッカリングエマルション / 動的速度論的光学分割 / 光学活性化合物 / リパーゼ / アルコール / エステル / Pickeringエマルション |
研究開始時の研究の概要 |
本申請では、「DKRによるキラル化合物合成」の諸問題を「Pickeringエマルションによる触媒反応」の方法論により解決する。申請者が取り組んでいる二つの研究領域を融合した本DKR法によりキラル化合物合成の新手法を提案し、方法論の確立から実用化を志向したフロー反応システムの構築まで一貫して取り組む。以下の3項目を具体的な到達目標とする。 1. モデル反応の検討により本方法論を実践的なDKR法として確立する 2. 光学活性体の合成が難しい3級アルコールを本DKR法により合成する 3. プロセス合成を志向したフロー反応システムを構築する
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研究実績の概要 |
速度論的光学分割と出発物質のラセミ化を同一系内で組み合わせた動的速度論的光学分割(DKR)は、ラセミ体を定量的に光学活性体へと変換できる優れた手法である。特に医薬品合成の中間体として重要なアルコール類は、リパーゼによる高選択的な光学分割を用いる手法が精力的に研究されてきた。しかし、ラセミ化に伴う副反応や、リパーゼとラセミ化触媒との共存性が大きな課題となっている。 本研究では、リパーゼと硫酸水溶液をそれぞれ速度論的光学分離とラセミ化の触媒として用い、ピッカリングエマルション中でのアルコールのDKRを達成した。本来は共存し得ないこれらの触媒は、ピッカリングエマルションによって同一系内で用いることが可能となった。DKRにおいて、酸触媒によるアルコールのラセミ化は、従来の有機溶媒中での反応では、副反応の抑制が課題となっていた。酸触媒中でアルコールはカルボカチオン中間体を経てラセミ化するが、カチオン中間体から二量体エーテルや脱水体のアルケンが副生してしまう。これに対し今回開発したピッカリングエマルションでのDKRは、ラセミ化反応を水相中で行うことで副反応が大幅に抑制された。一方、リパーゼによるアシル化光学分割は有機相で進行し、リパーゼと硫酸は同一の反応系内で機能した。本手法では、硫酸の濃度を基質ごとに最適化することで、電子供与性基や電子吸引性基を有するさまざまな電子的性質の基質に対して、高い収率と光学純度で目的生成物を得ることに成功した。エマルションを形成しない単純な二相系で反応を行った場合には反応は全く進行せず、リパーゼ/硫酸触媒によるDKRへのピッカリングエマルジョンの有効性が明確に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を開始して1年間の間にprrof of conceptとなる結果を得ることができ、現在は論文投稿に向けて原稿を執筆中である。同時進行で、次の展開となる複数のテーマを進めており、それらについても一定の結果が出てきている。全体として、計画は当初の計画通り、あるいはそれ以上に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
天然リパーゼを用いる動的速度論的光学分割(DKR)では一方のエナンチオマーしか得ることができない。これに対し、Pickeringエマルションを反応場として複数の反応を組み合わせることで、逆エナンチオマーに収束するDKRを計画し、検討を開始した。 また、Pickeringエマルションんが油水二相系の反応場となることを活かし、水にしか溶解しない化合物の変換反応も計画している。具体的には、水溶性の無保護糖に対し、脂溶性のグリコシル化試薬を用いたカップリング反応を計画している。
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