研究課題/領域番号 |
22K14692
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 亮 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (20833974)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 金属有機構造体 / 薄膜 / 物理蒸着 / ベイズ最適化 / MOF |
研究開始時の研究の概要 |
金属有機構造体(Metal-Organic Framework, MOF)は、1) 細孔内への分子導入、2) 化学修飾による電子物性の制御、といった従来の電子材料にはない性質を持つ。MOFのデバイス応用に向けて、溶媒を使用しない物理蒸着法(PVD)による薄膜合成が望まれているが、PVDによるMOF薄膜合成の条件最適化は困難である。 そこで本研究では、機械学習の一種であるベイズ最適化を活用して、物理蒸着法によるMOF薄膜合成を行う。ベイズ最適化を活用することで、複数の合成パラメータ(基板温度やH2O分圧、金属塩層と架橋配位子層の膜厚など)を人間が行うよりも効率よく最適化することが可能となる。
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研究実績の概要 |
金属有機構造体(Metal-Organic Framework, MOF)は金属イオンと架橋配位子の自己集合によって得られる多孔性物質である。MOFは、1) 細孔内への分子導入、2) 化学修飾による電子物性の制御、といった従来の電子材料にはない性質を持つ。MOFのデバイス応用に向けて、溶媒を使用しない物理蒸着法(PVD)による薄膜合成が望まれているが、PVDによる MOF薄膜合成は困難である。本研究は、ベイズ最適化を活用したPVDによるMOF薄膜合成を目的としている。R4年度は、MOFの一種であるHKUST-1の薄膜合成に取り組んだ。まず、物理蒸着法により酢酸銅とトリメシン酸の薄膜を交互に堆積させ、様々な基板温度、H2O分圧などで成膜を行ったが、HKUST-1薄膜を得ることはできなかった。そこで、1) 物理蒸着法による金属塩と有機配位子の交互積層、2) 酢酸蒸気雰囲気でのアニール処理という二段階の成膜プロセスを試みたところ、ガラス基板上に(111)配向したHKUST-1薄膜を合成することに成功した。 また、ベイズ最適化の材料開発への適用に向けて、材料合成を模したモデル関数を用いたシミュレーションを行った。その結果、材料合成のプロセスウィンドウに合わせたベイズ最適化のアルゴリズムのチューニング指針を見出した。このシミュレーションで得られた知やノウハウを活用することで、今後ベイズ最適化を活用したMOF薄膜合成を効率よく進めることができると期待される。 なお、今年度行ったMOF薄膜合成及びベイズ最適化のシミュレーションに関して、現在論文執筆を進めている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度はMOFの一種であるHKUST-1の薄膜合成を目的としていた。 幸いなことに、ベイズ最適化を用いない初期検討の段階で、1、) 金属塩と有機配位子の交互積層、2) 酢酸蒸気雰囲気でのアニール処理という合成戦略により、ガラス基板上に(111)配向したHKUST-1薄膜を合成できることを見出した。また、R4年度はベイズ最適化を用いた材料合成のシミュレーションも行った。これらの知見を組み合わせることで、R5年度以降、ベイズ最適化を活用したMOF薄膜合成を効率よく進めることができると考えられる。以上の理由より、これまでの研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は物理蒸着法と溶媒蒸気アニールを組み合わせた手法により、HKUST-1薄膜の合成を行った。R5年度は、交付申請書に記載した研究計画に基づき、Fe、Mo、Znなどを金属イオンとするHKUST-1類似構造体の薄膜合成・評価を行う。また、Cuを金属イオンとして、別の配位子からなるMOF薄膜合成にも並行して取り組む。
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