研究課題/領域番号 |
22K14709
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
森岡 和大 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70794056)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 楔形3Dマイクロチャネル / マイクロ流体デバイス / 3Dプリンティング / 粒子分離 / 粒子捕捉 / 楔型3Dマイクロチャネル / エクソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
エクソソームは,膜タンパク質やマイクロ RNA などの情報を数多く内包しており,離れた細胞間のコミュニケーションツールとして機能する。エクソソームの研究では,内包する情報の「量」や「質(種類)」が活発に議論されている一方,細胞から放出されるエクソソームの「サイズ」と生体機能の関係については議論が進んでいない。 本研究では, 楔(くさび)形 3D 微細流路(マイクロチャネル)内を流れる流体・粒子の挙動を流体解析や検証実験から明らかにする。また,そのふるまいを利用して,エクソソームをサイズ別に濃縮・回収できる技術を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は,楔形 3D マイクロチャネルを利用してナノメートルサイズのエクソソームをサイズ別に分離・濃縮する技術を開発することを目的としている.本年度は,楔形3Dマイクロチャネルの改良および低流量で蛍光粒子を分離できる方法について検討した.昨年度までに,ソフトリソグラフィーを利用したポリジメチルシロキサン(PDMS)製楔形 3D マイクロチャネルを作製し,それを用いて蛍光ポリスチレンマイクロ粒子の懸濁溶液を送液するのみで分離できることを明らかにした.マイクロチャネルをダウンスケール化して,ナノ粒子の分離の検討を試みたが,微細流路に溶液を流すことで生じる送液圧力が,PDMS製マイクロ流路を崩壊させ,実験を再現よく進められないことが問題となっていた.そこで,利用しマイクロチャネルの鋳型を作製する際の光造形式3Dプリント条件を検討し,より微細な構造で,再現よくマイクロチャネルを作製できる方法を見出した.作製したマイクロチャネルを用いて,粒子分離を行ったところ,流量 1 mL/min 程度の比較的低い流量で,6 um と10 um の蛍光ポリスチレン粒子を分離できることがわかった.これにより,送液圧力よってPDMSマイクロチャネルが崩壊せず,安定して粒子分を行うことが可能になると考えられる.本研究で得られた結果を,国内の学会で発表した. 本研究で得られた成果は,楔形3Dマイクロチャネルでエクソソームを分離するための基礎となる研究であり,今後はマイクロチャネルをさらにダウンサイズ化して,マイクロおよびナノサイズの粒子の分離について検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流路の楔形 3D マイクロチャネルを利用してエクソソームをサイズ別に分離・濃縮するために,PDMS を用いて作製した楔形 3D マイクロチャネルを使用して再現よく粒子分離に利用できる必要がある.こそで本年度は,前年度に確立したマイクロチャネル作製法を改良し,送液で生じる圧力でチャネルが崩壊しないようにより低流量で再現よく粒子分離を行うことを目標として実験を行った.光造形式3D プリンターで構造体を造形する条件を最適化し,安定して鋳型を作製できる積層ピッチや露光条件を見出した.また,鋳型の構造を PDMS に安定して転写するために,マグネトロンスパッタを用いて 鋳型表面に金薄膜を形成し,硬化した PDMS の剥離製を向上させることができた.チャネル構造を転写した PDMS プレートと,平滑な PDMS プレートを貼り合わせる条件を詳細に検討し,強固に貼り合わせることのできる加熱条件を見出した.実際に作製したマイクロチャネルを使用して6 um から10 um の蛍光ポリスチレン粒子の分離を検討し,1 mL/min 程度の比較的低い流量で分離を実行できることを明らかにした.この結果は,今後,楔形 3D マイクロチャネルをナノ粒子の分離に利用する検討を進めるためにとても重要である.さらに,本年度の実験から,エクソソームのようなナノ粒子の分離に利用できそうなマイクロチャネルのデザインや送液などの適切な設計・測定条件の予測を立てられている状態にある. これらの成果から,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,楔形3Dマイクロチャネルを利用してナノメートルサイズのエクソソームをサイズ別に分離・濃縮する技術を開発することである.これまでに,作製した楔形 3D マイクロチャネルを用いて,低流量で粒子分離・回収が可能であることを,マイクロメートルサイズの粒子を用いて明らかにしている.今後は,1) マイクロチャネルのサイズをダウンサイズ化することで,どのくらい小さなサイズの粒子まで分離できるかどうか,2)マイクロチャネルの幅や高さの変更,3D構造を活用することが粒子分離にどのように影響するのかを明らかにする.もし思うような結果が得られない場合は,UVグラフト重合や,PDMSにアミノ基やカルボキシル基などを有する化合物をブレンドするなど,PDMS表面の改質により解決を図る.より微細なマイクロチャネルの作製が必要な場合は,微細加工を得意とする企業に外注して作製した鋳型を用いることで研究を進めていく.この検討を進め,数十から数百 nm サイズの粒子を分離できるマイクロチャネルを開発する.マイクロ・ナノサイズの蛍光ポリスチレン粒子を用いて粒子分離を行った後,分離した粒子を回収して,粒径分布を計測する.これにより,粒子の回収率や濃縮効率を明らかにし,マイクロチャネルの性能を評価する.その後,標準品のエクソソームを用いて分離検討を行い,作製したマイクロチャネルがエクソソームの分離・濃縮・回収に利用できることを明らかにする.また,実試料中のエクソソームを対象とした実験を行い,夾雑成分の影響や,エクソソームの回収率について詳細に評価を進める.
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