研究課題/領域番号 |
22K14710
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
斎藤 直樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (00635823)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | プレサチュレーション / デュアル照射 / faraway water / NOESY / 位相回し / 展開時間 / 混合時間 / 観測中心 / ヒト尿中代謝物 / qNMR / プレサチュレーションパルス / 正確さ |
研究開始時の研究の概要 |
前処理不要な1H NMRによるパターン解析により、ヒト尿中代謝物から大腸がんなど疾患の新規指標候補が見出されている。ここで、1H NMRによる定量分析法(qNMR)を適用すれば、標準物質が入手不可能な成分でさえも正確に定量でき得るため、ターゲット代謝物を指標とした疾患リスクの評価等が進展し得る。しかし、ヒト尿に対する現在のqNMRでは、大きなバイアスの存在が示唆されている。本研究では、ヒト尿測定で主たるバイアス要因となり得る溶媒消去パルスのうち、最も単純な古典的プレサチュレーションパルス(pre-SAT)を用いて、水近傍シグナルでも正確かつ簡単に定量できるユニークな手法を開発する。
|
研究実績の概要 |
考案した古典的プレサチュレーションパルス(以下、presat)のデュアル照射法は、高い定量性を有するものの、H2O測定溶液中でプローブコイル中心から離れたfaraway water由来のブロードなシグナルを十分に抑制できないことがわかった。そこで本年度は、faraway waterシグナルを抑制できる代表的な水消し手法のNOESY-presat法の定量性評価を行った。NOESY-presat法にpresatデュアル照射法の概念を将来応用すれば、定量性を確保しつつ、かつfaraway waterシグナルを抑制できるqNMR用手法を構築できる可能性を考えたためである。NOESY-presat法はpresatに加えて、位相回しを伴う3つの90°パルスから構成されるため、NOESYブロックのパラメータが濃度測定値に与えるバイアスを調べた(presatなしで測定可能な各種アミノ酸のD2O溶液利用)。その結果、90°パルス間の遅延時間(展開時間、混合時間)の設定によって、得られる濃度測定値に最大54 %のバイアスが生じた。展開時間、混合時間を0秒に設定しても、最大3 %のバイアスが残ることがわかった。このバイアスは、観測中心を分析対象成分と内標準物質のシグナル同士の中点に設定すると解消でき、オフレゾナンス効果に起因すると考えられる。ここで得た知見を踏まえて、アミノ酸等を溶解したH2O/D2O(90/10 vol%)溶液にNOESY-presat法を適用したところ、得られる濃度測定値に最大26 %のバイアスが生じた。この主要因は、SN比向上のために必要な比較的強いpresat照射であることがわかった。Presat照射によるバイアスは、そのデュアル照射の実行によって大きく低減できる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考案したpresatデュアル照射法の課題を明らかにし、その解決に向けた基礎的検討を開始できたためである。さらに、学会発表など成果を上げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
プローブ等が異なるNMR装置間で、NOESY-presat法等による水消しの性能が異なる可能性があることがわかってきた。そこで、今後は装置間でのNOESY-presat法等の性能比較等を行う予定である。
|