研究課題/領域番号 |
22K14712
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
園部 量崇 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMSポスドク研究員 (30930648)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 二体分布関数 / 機械学習 / 未知構造解析 / 低次元材料 / ナノ材料 / X線散乱 / X線回折 / 電子 / ナノ構造 / X線 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ材料では、バルク材料には見られない特異な機能物性が発現するが、その根源である全原子配置は正確に導くことが極めて困難であり、駆動原理の理解が十分でない。全原子間距離の情報をもつ二体分布関数(PDF)を解析することが、ほぼ唯一の方法となっている。しかしながら、PDF解析の方法論には未だ決定的なものが無く、既存の方法では実際の低次元材料への適用が困難である。構造モデルの探索空間が膨大であることと、十分に効率的な探索アルゴリズムが無いことが従来の方法の課題である。そこで、本研究では独自のアルゴリズムによる探索空間の大幅な削減と訓練による高速化が見込める機械学習を用いたPDF解析法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、未知構造材料の構造を明らかにできるアルゴリズムの開発を目指し、二体分布関数と機械学習を組み合わせた方法論の検討を実施している。特に、構造が未知な低次元材料の原子配置はバルク結晶に比べ低い秩序構造を有するため、二体分布関数による解析が有効となっている。 昨年度は、未知構造の材料としてルテニウムナノシートを取り挙げ、その構造解析を行った。実際に、合成されたナノシートの二体分布関数を測定したところ、ナノシートの面内で金属元素の原子配置のパターンが変化することにより、複数の構造多型が存在しうることが分かった。ナノシートの原子配置を決定し、他の多型との比較を行った結果をについて論文発表(J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 15008-15012)を行った。 また、二体分布関数を得る手段であるX線回折法では、原子中の電子の数がその強度を反映する。そのため、従来のシミュレーション方法では、構造内の元素種を区別して解析する必要があった。一方で、機械学習による解析を行うにあたり、複数の元素をそれぞれ区別して取り扱うより、電子からシミュレーションする方が数値計算上の取り扱いが単純され、行列を使い並列演算ができる可能性がある。これは三次元の結晶の未知構造解析でよく用いられる直接法に類する考え方であり、低次元材料においても効率的な解析が実現する可能性がある。そこで上記の構造解析と並行して、二体分布関数を電子から取り扱うための方法論について、回折理論の導出およびシミュレーションプログラム実装を完了し、アルゴリズム上課題であった元素種の区別の問題を解決できた。また現在、これについては論文を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるための実験データはすでに取り終えており、解析が困難な低次元材料の未知構造についても本研究によってその構造が解かれた。開発アルゴリズムについても、シミュレーション法や理論の導出などの基盤開発はすでに終えており、これを基に引き続き、手法を発展させることが可能である。これらに関して、研究が順調に進んでおり、成果として投稿論文及びプログラムの開発にもつながっているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取り組んでいた、電子ベースの二体分布関数のシミュレーション方法に基づき、測定された二体分布関数のデータから未知構造の電子密度を導出する方法を今後検討する。また、それに続き、今回解いた未知のナノシートの構造をそのアルゴリズムを使って解くことにより、その手法の有用性を評価する。まだ、構造が解かれていない未知の多型構造についても、その構造が明らかになるのではないかと期待している。
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