研究課題/領域番号 |
22K14730
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
呉羽 拓真 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60836039)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 高分子 / ゲル / 動的光散乱法 / 拡散係数 / 力学的特性 / 高分子ゲル / 分子クラウディング / ダイナミクス / 光散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内には様々な生体分子が混み合った状態で存在し、細胞壁や分子と接触・相互作用しながら機能を発現する。この混み合った環境では生体分子が高活性化する分子クラウディング効果を示すが、なぜ高活性になるのかは未だ不明であり、病症解明や創薬に向け、機構の解明が望まれる。そこで本研究は、高分子密度や、ゆらぎ(高分子の拡散性)が定量化・制御された合成高分子ハイドロゲル網目を設計し、ゲル網目のゆらぎと、その中で生化学反応を示す生体分子の運動を非破壊・リアルタイム・同時観測可能な評価法を確立する。そして、実際に生体内で生じる動的な生体分子の運動や機能を再現または超越できる合成ゲル網目を創製する 。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、密度とゆらぎを制御した生体適合性ゲル網目の開発およびゲル網目と、その内部の生体分子の運動・相互作用を厳密に評価できる手法を確立することで、生体分子が高活性化可能なゲル網目の構造最適化と生体現象の発現を目指している。本年度は、生体適合性ゲルの合成条件の精査とゲル網目内部の分子運動評価をメインに進めた。 具体的には側鎖にエチレングリコール基を有し、高い生体適合性を示す高分子であるポリオリゴエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(pOEGMA)を対象に、ゲル化条件を明らかにした。pOEGMA鎖は側鎖のエチレングリコール数を変えることで側鎖長が変わるため、ゲル網目の密度などを制御すること ができる。しかし、pOEGMAのゲル化条件やゲル化後の物性は不明確であるため、ゲル化条件を調査した。従来ゲル化に重要な架橋剤やモノマー濃度に加え、側鎖長に依存して、ゲル化閾値や挙動が異なることがわかった。特に、エチレングリコール側鎖からラジカルが生成し、重合反応が進行することでゲル化のしやすさやゲル網目の架橋密度に影響することもわかり、精密制御において重要な知見となった。これら研究内容の一部は学術論文として投稿中である。 また、合成したpOEGMAゲル網目内部にプローブとして微粒子を内包させ、動的光散乱法(DLS)によりプローブ粒子の拡散を定量することでゲル網目が分子の運動性に与える効果を評価した。側鎖長が異なるゲル網目において、プローブ粒子の拡散係数は側鎖長に伴い減少し、分子拡散に影響することを確かめた。さらに、昇温によりプローブ粒子の拡散性が増加することも確かめ、分子運動の制御因子として有効であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究目的の一つであるゲル網目の精密制御として、高分子側鎖に注目し、ゲル化条件の精査やゲル網目の物性評価を重点的に実施し、側鎖長がゲル網目に与える影響を明らかにすることができた。特に、ゲル化条件を解明でき、学術論文として投稿中であることから概ね順調に進展していると判断した。また、動的光散乱法による内包分子の運動性評価も進んでおり、まとまった結果が得られつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、内包分子をタンパク質や細胞といった生体分子を対象に、ゲル網目上で動態を評価する予定である。現在、細胞の吸着や生存率の評価を実施中であり、実験条件を確立したのちに光散乱法を駆使し、ゲル網目の構造物性が生体分子の運動性に与える影響を明らかにする。
|