研究課題/領域番号 |
22K14741
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 奈良女子大学 (2023) 北海道大学 (2022) |
研究代表者 |
庄司 淳 奈良女子大学, 工学系, 助教 (80779075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ポルフィリン / 希土類錯体 / 配位高分子 / 超分子 / 近赤外発光 / 一重項酸素 / エネルギー移動 / ナノ構造 / セラノスティクス |
研究開始時の研究の概要 |
医療の診断と治療を同時に行うことをセラノスティクスという。光でガンを可視化する光線力学診断(PDD)と光でガンを治療する光線力学療法(PDT)を同時に行うセラノティクス材料が注目されている。ポルフィリン色素と発光性錯体(Yb3+)および無蛍光性錯体(Lu3+)を精密に配列することで、近赤外発光(PDD)と一重項酸素生成(PDT)を両立する材料の構築を考えた。本研究では、ポルフィリンと希土類錯体から構成される配位高分子を両親媒性高分子ミセル内で形成させることで、ナノ構造が制御された光線力学的ナノセラノスティクス材料を開発する。
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研究実績の概要 |
ポルフィリン色素と発光性希土類錯体および無蛍光性希土類錯体を精密に配列することで、近赤外発光(光線力学診断:PDD)と一重項酸素生成(光線力学療法:PDT)を両立した光機能材料の構築を目的としている。ホスフィンオキシド基を複数有するポルフィリン誘導体を合成し、これらを配位子として希土類錯体と錯形成させることで種々の構造の配位化合物を合成した。単結晶X線構造解析などの構造評価から、ポルフィリン配位子と希土類錯体が交互に一次元配列した構造、ポルフィリン配位子が希土類錯体で架橋されたカゴ型の構造、希土類錯体で架橋されたポルフィリンがスタックした二量体の構造が形成されることを明らかにし、ホスフィンオキシド基の数や位置によって構造を制御できることを見出した。ポルフィリン部は光増感剤として機能し、ポルフィリン部を選択的に光励起すると酸素分子へのエネルギー移動とYb3+イオンへのエネルギー移動による近赤外発光を示すことがわかった。近赤外発光強度は酸素分子の有無に依存するが、溶液中に酸素分子が存在する条件下でも特定の分子とホストゲスト超分子を形成することで発光強度が変化する挙動も確認された。また、量子化学計算を用いて系統的に分子を調べ、ゲスト分子になりうる構造を検討した。ポルフィリンと希土類錯体から構成される配位化合物のホストゲスト相互作用で近赤外発光と一重項酸素生成の制御を期待できる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
希土類錯体への配位部位として、ポリフィリン化合物のメソ位にホスフィンオキシド基を2つもしくは4つ導入した配位子を合成した。合成したポルフィリン配位子と希土類錯体を錯形成させることで様々な構造の配位化合物が得られた。また、単結晶も得られ、X線構造解析による評価でポルフィリン配位子と希土類錯体が交互配列した一次元構造、カゴ型の構造、ポルフィリンがスタックした構造を形成することがわかった。近赤外発光性のイッテルビウム(Yb3+)錯体とポルフィリン配位子から構成される配位化合物はポルフィリンが光増感剤として機能し、Yb3+イオンへのエネルギー移動と酸素分子へのエネルギー移動の両方を生じさせることがわかった。また、一部の配位化合物において、これらのエネルギー移動は特定の分子とホストゲスト相互作用することで制御できることも明らかになった。ゲスト分子の導入によって酸素分子へのエネルギー移動が抑制され、Yb3+イオンの近赤外発光強度が増大される結果が得られた。ゲストとなりうる分子を量子化学計算で系統的に調べ、ポルフィリンと希土類錯体から構成される配位化合物との安定化エネルギーが大きい分子群を見つけることもできた。近赤外発光と一重項酸素生成の制御を可能とする結果が得られた。そのため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ポルフィリン配位子と希土類錯体から構成される様々な構造の配位化合物を合成し、ポルフィリンが光増感剤として機能した近赤外発光と一重項酸素生成を達成している。また、合成した配位化合物が特定の分子を認識することで、近赤外発光強度を変化させることも見出している。今後は配位化合物の構造と物性の相関を明らかにし、その制御をさらに行っていく。また、ポルフィリンと希土類錯体による配位化合物の水中での物性の検討を進めていく。
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