研究課題/領域番号 |
22K14743
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊谷 翔平 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (00838188)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 有機半導体 / 結晶構造 / トランジスタ / 単結晶 / 電子伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
相補型有機集積論理回路に実応用可能な,室温で10 cm2/Vsを超えるn型有機半導体の開発を目指す。特に,比較的嵩高く硬い脂環式化合物を置換基に用いることで,半強制的な電子輸送に適した結晶構造制御を目指す。また,単結晶トランジスタによる電子伝導性評価をおこなうことで構造物性相関を明らかにし,さらに計算化学の併用により将来の有機半導体材料開発に有用な側鎖データベースの構築を進める。
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研究実績の概要 |
相補型有機集積論理回路へ応用可能な,室温で10(cm2/Vs)を超える高移動度n型有機半導体の開発を目指し,本年度は主に,置換シクロヘキシル基を有する分子群の合成と,単結晶構造解析および伝導計算を遂行した。 特に着目している含窒素パイ電子系骨格に対し,メチル基やtert-ブチル基など様々な炭化水素基を持つ置換シクロヘキシル基を導入したところ,メチル基,エチル基,n-プロピル基で置換した場合,無置換シクロヘキシル基を用いたものと同様の結晶構造をとることが明らかになった。これらは溶液塗布法により単結晶薄膜を形成することが可能であったが,とりわけメチル置換体により良質な薄膜を得ることができた。メチル置換体の単結晶薄膜を用いることで詳細な薄膜トランジスタ評価を実施することに成功し,バンドライク伝導性に起因して,室温で移動度4(cm2/Vs)を示すことが明らかになった。一方で,単結晶薄膜を大面積に製膜することで,単結晶構造と電子移動度との異方性の関係に有益な知見が得られた。結果として,室温で観測された最大移動度は,電子移動度が最小になる方位で得られたことがわかった。これはp型有機半導体とは異なる特徴であり,高移動度n型有機半導体およびデバイス開発を目指すうえで,異方性を正しく理解し利用することの重要性を示すものと言える。 また,結晶構造予測の手法を用い,関連する様々な分子構造において取り得る集合体構造の知見を深めた。分子構造と予測構造との関係性に対する情報整理は進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチル置換化合物に焦点を当てることで,単結晶構造と電子輸送物性との相関を,実験と理論とを併用し非常に深めることができた。また,同一のパイ電子系骨格を用いた場合の,置換基の形状や大きさと結晶構造様式との関係を概ね掴むことができたため,今後の分子設計において重要な知見を種々得たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に得られた分子構造と結晶構造との傾向から,より優れた結晶構造が期待できる置換基をデザインし,引き続き合成からデバイス測定までを遂行する。さらに,同一の側鎖置換基を用いた場合の,異なるパイ電子系骨格間の比較もおこなう。 また,結晶構造予測により予期された結晶構造と実験構造との対比を調べるため,結晶構造予測リストから有望な分子構造を選定し,合成を進めたい。
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