研究課題/領域番号 |
22K14752
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 隆之 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (30851018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ペロブスカイト / 半導体 / カルコゲナイド / 太陽電池 / 硫化物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、次世代太陽電池材料の候補であるペロブスカイト型硫化物BaZrS3に着目し、課題であった化学修飾によるキャリアドーピング手法の確立と本物質を基盤とした太陽電池デバイスの作製を試みるものである。各原子サイトの欠陥耐性に対する考察から、各サイトに適した合成手法を採用して化学修飾によるn型およびp型半導体化を目指す。BaZrS3に限らずペロブスカイト型硫化物は優れた光学特性をもつ半導体材料群であることが知られており、本研究課題を遂行する過程で得られる知見は太陽電池の分野にとどまらず、発光半導体も含めたオプトエレクトロニクス分野の発展に広く貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の対象物質であるペロブスカイト型硫化物BaZrS3は、太陽電池材料として有望な電子構造を有し、巨大な吸収係数を示すだけでなく、化学的耐久性が高く、毒性元素も含まないことから、次世代型太陽電池材料の候補物質として近年注目を集めている。しかしながら、キャリア制御に関して課題を残している。太陽電池応用を見据えた際にキャリア極性・濃度の制御は不可欠であり、化学ドーピング等の手法によって自在に制御できるのが理想的であるが、BaZrS3においては適したドーパントが見つかっておらず、化学ドーピングによるn型、p型伝導、キャリア濃度の制御は未だに報告されていない。 このような背景から本研究では、BaZrS3における化学ドーピングによるキャリア制御を目標とし、本年度は最適な化学ドーパント種の探索を行った。先行研究で報告されているBaZrS3の各原子サイトの欠陥生成エネルギーを参考に、各原子サイトで適当な物質合成プロセスを検討、考察し化学ドーピングを試みた。その結果、少なくともバルク多結晶体においてドーパントの種類によってキャリア極性が反転し、ドーパント量に従ってキャリア濃度が変化する結果が得られた。 以上の結果を太陽電池応用に展開するためには薄膜試料で同様の結果を得る必要がある。バルク多結晶体の結果から選定したドーパントを用いて多結晶薄膜でもキャリア制御を試みたがこちらは現状成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の達成目標と設定していたn型、p型ドーパントの探索にはおおむね成功したと考えている。さらにドーパント量を制御することに伴ってキャリア濃度変化する傾向確認しており、目標の一つであった化学修飾によるキャリア濃度の制御も成功しつつある。以上のことから総合的に(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はキャリア濃度を制御したBaZrS3薄膜の作製に取り組む予定である。これまでに様々な手法で薄膜作製が行われているが、キャリア濃度を制御した薄膜の報告はほとんどなく、p型伝導の報告は未だにない。このような背景から、今年度はこれまでに探索したドーパントを足掛かりに化学修飾によってキャリアの極性・濃度を制御した薄膜の作製を試みる。さらに、BaZrS3に限らず硫化物ペロブスカイトは発光半導体・太陽電池材料に適した電子構造を持っていることが知られており、その電子構造の起源を明らかにすることは今後の物質探索における重要な指針を与えることが期待される。したがって、第一原理計算を用いてその起源解明も試みる。
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