研究課題/領域番号 |
22K14754
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
能登原 展穂 長崎大学, 工学研究科, 助教 (20908595)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 全固体電池 / 多孔性カーボン / SnO2 / 電子顕微鏡観察 / その場観察 / STEM |
研究開始時の研究の概要 |
全固体リチウムイオン電池の高容量化のためにはSnO2などの高容量な充放電活物質を利用する必要があるが,これらは充放電に伴う大きな体積変化のため安定な作動に至っていない。多孔性カーボンは充放電活物質を全固体電池に適用するためのホスト電極材料として有効であるが,固体電解質の存在しない多孔カーボン細孔内におけるLiイオン伝搬メカニズムを明らかでない。本研究では多孔性カーボンの細孔内に制約したSnO2の充放電過程における構造変化やLiイオンの伝搬メカニズムを明らかとし,SnO2の高速充放電時も高容量を発現可能なSnO2/多孔カーボン電極材料を創成する。
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研究実績の概要 |
本研究では多孔性カーボンの細孔内に制約したSnO2の充放電過程における構造変化やLiイオンの伝搬メカニズムを明らかとし,高速充放電時も高容量を発現可能なSnO2/多孔カーボン電極材料を創成することを目的としている。これまでの研究で,細孔内のSnO2の充放電反応率はSnO2担持量に依存することから,カーボン細孔内におけるLiイオン拡散はSnO2粒子同士の接触を介して行われていると予想される。今年度は,①SnO2粒子の担持状態と充放電特性の関係解明,②in situ STEM観察によるSnO2カーボン複合体中のLiイオン伝搬挙動の観察から,Liイオン拡散メカニズムを調べた。 ①多孔カーボン細孔壁面に担持したSnO2粒子を熱処理によって凝集させ,粒子同士の接触状態と充放電反応性を評価した。熱処理によって細孔壁面に密に担持されていたSnO2粒子は凝集,粗大化し,粒子間の距離を制御した複合体を得た。硫化物全固体電池における充放電測定より,熱処理前後で容量が大きく減少することがわかった。SnO2粒子にLiイオンが直接アクセスできる有機電解液系では固体系ほど容量が低下しなかったことから,全固体系ではSnO2粒子間接触が途切れることでLiイオン拡散経路が途絶え,容量低下をもたらしたと考えられる。 ②電気化学測定用TEMホルダーに作用極としてSnO2ナノ粒子・カーボン複合体を,固体電解質,対極に表面を酸化させた金属Li箔を固定し,小型の全固体電池を作製した。これを電子顕微鏡内に入れ,電位を操作することで充放電反応に伴うSnO2・カーボン複合体上のLiイオンの移動を観察した。LiイオンはSnO2上を優先的に伝搬し,SnO2がカーボン上に密に担持された複合体では高い反応可逆性を示した。 以上の検討から,SnO2/多孔カーボン複合体中ではSnO2の粒子接触がLiイオン拡散に重要であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1,2年目に予定していたLiイオン拡散現象の直接観察や,Liイオン拡散や充放電反応に重要な構造パラメータを実験的に明らかにしており,当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
カーボン細孔内におけるLiイオン拡散性を定量的に評価するために,電流間欠滴定法や交流インピーダンス法による電気化学測定を進めていく。また,カーボン細孔内のイオン拡散性をさらに高めるために,カーボン細孔内への固体電解質の導入や,Sn/多孔カーボン複合体の合成検討を行い,構造評価,充放電特性評価を行う。
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