研究課題/領域番号 |
22K14787
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 智也 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (30837886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 遷移金属触媒 / 低分子ゲル化剤 / バイオマテリアル / 生体内反応 / ハイドロゲル / 人工金属酵素 / 金触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、遷移金属触媒による芳香環形成反応を引き金として生体内でゲル化を引き起こす手法を開発する。芳香環形成反応の基質構造を様々なペプチド誘導体に導入し、ゲル化剤の候補化合物ライブラリーを作成する。生体内環境でも金属触媒と反応しやすく、かつ反応によってゲル化を引き起こす分子を探索する。 開発したゲル化剤と遷移金属触媒を細胞培養液中やマウス生体内に導入し、がん治療や止血材への応用に向けての概念実証となる研究を行う。
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研究実績の概要 |
生体内でのバイオマテリアルとしての応用を目指して、様々な低分子ゲル化剤が開発されている。これまで、生体内の酵素反応に応答してゲル化を引き起こす低分子ゲル化剤が多く開発されており、生体内患部で選択的にゲル化させることで細胞組織工学やがん治療に応用する研究が行われてきた。しかし、これらの手法でゲル化の引き金として用いられる酵素反応は酵素の患部選択的な局在や触媒できる反応に制限があり、その応用範囲は限定されている。 これらのゲル化の引き金について、酵素反応に代用できる化学反応として、生体内に導入した金属触媒による反応が挙げられる。近年は生体内に遷移金属触媒を導入し、患部選択的なプロドラッグの活性化等に応用する研究が行われている。そこで本研究では遷移金属触媒反応を引き金としてゲル化を引き起こす低分子ゲル化剤を開発し、細胞環境や生体内への応用を目指した。 本年度は、遷移金属触媒による芳香環形成反応によって低分子ゲル化剤の疎水性部分の構造を変換するという戦略によって、芳香環形成反応の基質構造を様々なペプチド誘導体や糖誘導体に導入した化合物を合成した。これらの分子について、ゾルからゲルへの転移を引き起こす反応条件の検討を行い、遷移金属触媒反応によってゲル化を引き起こす分子を見出すことができた。さらに、透過型電子顕微鏡観察やNMR測定によってゲル化剤が形成する超分子複合体構造を解析することで、遷移金属触媒反応によってゲル化が起こる機構について推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、ゲル化の引き金として用いる遷移金属触媒反応について水溶媒条件における基質一般性を検討した。ゲル化の引き金として利用する予定であった芳香環形成反応が基質の水溶性に依存して進行しにくく、代わりに予想とは異なる環化反応が進行しやすくなるという問題に直面した。しかし、ゲル化剤の構造やゲル化を補助する分子の添加、ゲル化に用いる反応条件を検討することで、この環化反応を引き金としてゲル化を引き起こす分子を開発することができた。これらの検討により、本研究計画の目標の一つである、遷移金属触媒反応をゲル化の引き金とするゲル化剤の開発を達成した。 また、透過型電子顕微鏡やNMR測定、ゲル化剤構造の検討により、遷移金属触媒による環化反応を引き金としてゲル化剤が形成する線維構造が変化することが明らかとなり、これらの線維構造変化がゲル化の引き金として働くというモデルを提唱することができた。 これらの研究経過は研究開始時の研究計画に従っており、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発したゲル化剤について、細胞培養液中やマウス生体内に導入し、遷移金属触媒反応を引き金としてゲル化を引き起こす条件での細胞毒性や細胞増殖への影響を検討する。細胞毒性があれば、マウス生体内のがん細胞でゲル化を引き起こし、ゲル化によってがん細胞の増殖を抑える研究を行う。一方で、ゲル化剤に人工細胞外マトリックスとしての応用可能性があれば、細胞組織工学への応用を目指す。 また、今回開発したゲル化剤を薬剤放出やイメージングに用いるナノ粒子としての応用も目指す予定である。
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