研究課題/領域番号 |
22K14803
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
反田 直之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10816292)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 植物 / ホウ素 / 生物間相互作用 / 食害 / ハクサイ / 植物栄養学 / 防御応答 |
研究開始時の研究の概要 |
植物の栄養のひとつであるホウ素(ホウ酸)は、高濃度において細胞毒性を示す。申請者は植物のホウ素輸送の研究をきっかけに、高ホウ素環境で栽培されたシロイヌナズナが、通常条件で栽培された場合に比べて、昆虫(モンシロチョウ幼虫)による食害を受けにくいことを見出した。本研究ではモデル植物で得られた、ホウ素の毒としての機能を植物が積極的に利用している可能性を、複数の作物を対象として検証することで、学術的観点からホウ素の生物における新たな役割を検証するとともに、食害抵抗性作物の育種においてホウ素の輸送と蓄積という新たな視点の提案を目的とする。
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研究実績の概要 |
植物に蓄積したホウ酸が昆虫による食害に対する耐性を付与する可能性を、作物種において検証するため、異なるホウ素環境で栽培したハクサイに対して、食害抵抗性試験を実施した。まず同等な生育状態の植物を用いてホウ酸の影響を評価するため、通常条件で栽培したハクサイに対して0~2 mMのホウ酸を根に投与し8日間栽培した。その後ハスモンヨトウの若齢幼虫を葉に乗せ、各ハクサイを13日間摂食させた。13日後の幼虫の体重を測定し、各植物の食害に対する抵抗性の指標とした。その結果、ホウ酸 0 mM処理区に比べて、500 μM ~ 2 mMの処理区にて、幼虫の体重の有意な減少と生存率の低下が見られた。この結果から、植物へのホウ酸の投与によって昆虫による食害に対する植物の抵抗性が上昇することが示唆された。さらに、幼虫の生育に影響を与える植物体内のホウ酸の濃度域を検証するため、摂食実験に試供したのと同等の条件で栽培したハクサイに対して、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)による元素分析を行った。その結果、幼虫の生育に影響が見られた500 μM ホウ酸処理区の植物では0 μM処理区に対してホウ素濃度が有意に上昇しており、その濃度はホウ酸が蓄積しやすいことが知られる外葉の平均値で乾重量当たり約500 ppm、地上部全体平均で約150 ppmであった。また摂食実験後の幼虫の元素分析により、500 μMホウ酸処理区の植物で飼育した幼虫は0 μMホウ酸処理区の植物で飼育した幼虫と比較して高濃度のホウ素が蓄積していることが明らかになった。これらの結果から、植物におけるホウ酸の蓄積状態がハスモンヨトウ幼虫の生育と体内ホウ素濃度に影響を与えることが示された。これらの知見は、食害抵抗性作物の育種においてホウ素の輸送と蓄積という観点の有用性を示唆するとともに、ホウ素の生物間相互作用における新たな役割を示唆するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、植物の栽培、昆虫を用いた摂食実験が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施した実験の再現性の確認を行うとともに、ホウ素処理期間を長期化させることで、植物への高濃度ホウ酸の投与による植物生育への影響と、食害に対する抵抗性の上昇のトレードオフの関係を検証する。また対象作物種の拡大行うとともに、遺伝学的手法によってホウ素を介した食害抵抗性の仕組みの理解を行う。
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