研究課題/領域番号 |
22K14820
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
須志田 浩稔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 研究員 (10885510)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 乳酸菌 / 微生物間相互作用 / 抗菌性物質 / スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
微生物の細胞間情報伝達は、情報伝達因子により菌密度を感知し自身の生育状況に応じて代謝を切り替える生存戦略である。一方、異なる微生物の存在が代謝状態を変化させる例も見出されており、微生物間の情報伝達を介した相互作用も同様に生存戦略として機能することが示唆されている。本研究では、乳酸菌と他の微生物との間で生じる相互作用をモデルとした「微生物間で機能する情報伝達因子の探索」と「相互作用が制御する代謝経路の解析」により、生存戦略としての視座から微生物間の情報伝達機構を解明する。同時に、本研究の成果は「情報伝達因子を利用した微生物機能の探索」として実践し、微生物資源の利用加速に資する技術基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では、微生物間相互作用による遺伝子発現・代謝状態の変動に着目し、乳酸菌をモデルとした「情報伝達因子の探索」と「相互作用が制御する代謝経路の解析」により、微生物間の情報伝達機構を生存戦略としての視座から解明する。昨年度までに、Pseudomonas属細菌、Xanthomonas属細菌、Dickeya属細菌(以後、Ps, Xc, Diと記載)の培養液上清を添加することで環境サンプル中の微生物叢変動が誘起されることを明らかにした。 本年度は、上記3菌種の培養液が乳酸菌等の生育に及ぼす影響を調査するとともに、選抜株の抗菌物質生産性を試験した。分離源、および微生物分離法は昨年度の実績報告書に記載の通りである。供試乳酸菌候補として、新たに農作物残渣より同様に分離した30株を加えた計455株を用いた。Ps, Xc, Diの代謝物による生育促進・抑制を調査するため、MRS液体培地に1%(v/v)のPY液体培地、または3種の微生物いずれかのPY液体培養液無菌上清を添加したものを調製した。乳酸菌候補株はMRS液体培地で前培養を行ったのち、96穴プレートに分注した上記試験用培地へ1%(v/v)で接種後、30℃、16時間培養後のOD=595nmを測定した。抗菌活性は、OD測定後のPY添加区分培養液を用いたspot-on-lawn法により試験した。 その結果、異種微生物の培養液添加区分とコントロールとの間に有意な生育の差異は確認されなかった。一方、8株の検定菌を用いた活性試験では18株で活性が確認され、うち6株はミカン落果土壌由来・Xc添加区分、4株がイチジク由来・Ps添加区分での分離株であった。前者はグラム陽性細菌へ比較的広範な活性を示した一方、後者はBacillus subtilis特異的な活性が確認されており、抗菌性物質の同定を進めるとともに、異種代謝産物による生産性への影響を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生育試験では有意な結果が観察されず、生育促進・抑制因子については解析を中断している。抗菌物質を生産する菌株は複数単離することに成功しており、抗菌スペクトルについての調査も完了している。また、菌種同定についてはバイオタイパーおよびOxford NanoporeのMinIONによる実施体制を整備している。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌活性が確認された18株については、まず、バイオタイパーによる簡易菌種同定を実施する。同時に、ロングリードシーケンサーによる全ゲノム解析を実施し、BAGEL4による抗菌物質生合成遺伝子群の探索を行うとともに、リファレンスゲノムとの比較解析を試みる。さらに、今年度実施した生育試験と同様の培養条件を適用した抗菌活性試験を行い、異種微生物の代謝産物が抗菌物質の生産性へ及ぼす影響を調査する。
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