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原始植物ホルモン受容体-リガンドを用いた人工的逆進化によるジャスモン酸応答制御

研究課題

研究課題/領域番号 22K14834
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分38040:生物有機化学関連
研究機関東北大学

研究代表者

加治 拓哉  東北大学, 理学研究科, 助教 (80835520)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
キーワード植物ホルモン / ジャスモン酸 / ケミカルバイオロジー / 受容体 / タンパク間相互作用 / 分子進化 / タンパク-タンパク間相互作用
研究開始時の研究の概要

ジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile)は、防御応答や二次代謝活性化など、魅力的な作用をもつ植物ホルモンである。JA-IleはCOI1-JAZ共受容体に結合して各種の生物応答を引き起こすが、遺伝的な冗長性のため、その生理応答の制御機構は全容は未だ明らかでない。
最近、苔類ゼニゴケではシロイヌナズナと異なり1種類の受容体しかなく、dn-OPDA類を原始的な植物ホルモンとして用いていることが明らかになった。
本研究では、ゼニゴケの受容体系を活用して、高等植物を人工的に先祖返りする戦略が、遺伝的に冗長なシグナル伝達ネットワークの進化過程の一端を明らかにする有望な手法であることを実証する。

研究実績の概要

本申請研究では始原ジャスモン酸受容体-リガンドを用いて、高等植物の植物内でキメラ受容体を作成することで、原始的な合成リガンドによるシグナル伝達を先祖返りさせ、部分的なジャスモン酸シグナルの活性化が可能かどうかを明らかにすることを目指している。当該年度においては、本申請研究の一環として下記を実施した。
1) 昨年度合成を達成した、ゼニゴケにおいて新たに見出されたジャスモン酸リガンドdelta4-dn-iso-OPDAについて論文投稿を行うため、ゼニゴケのジャスモン酸応答の評価を実施した。また、他のコケ植物類を含めた始原ジャスモン酸リガンドの分布を評価するための定量的な代謝分析のため、重水素標識化したリガンド類の合成を新たに行い、LC-MS/MS解析を行った。現在、論文を投稿、査読対応中であるため、結果の詳細については省略する。
2) 昨年度から、人工的先祖返りの概念実証を目的としたシロイヌナズナ形質転換体の作成を開始し、T0種子から得られたヘテロ株よりT1種子を得ていた。今年度は、ホモラインの確立のため、得られたT1ラインについて栽培し、genotypingと薬剤耐性を組み合わせたスクリーニングによりT2ラインを得た。得られたT2ラインについて、genotypingでの確認を行うことで、ホモライン候補がMpCOI1導入体とAtCOI1再導入体についてそれぞれ得られた。すなわち、人工的先祖帰り変異体であるProm(COI1)::MpCOI1-FLAG in coi1-30のMpCOI1-FLAG導入についてホモ、coi1-30変異についてヘテロなT2種子と、Prom(COI1)::AtCOI1-FLAG in coi1-30について、AtCOI1-FLAGおよびcoi1-30変異どちらもホモなT2種子を得ることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は申請研究の概念実証に必要不可欠なシロイヌナズナの変異体の導入遺伝子のホモラインについてそれぞれ得ることができたものの、変異体を用いたジャスモン酸の部分的活性化の実証といった生理応答評価まで至らなかったことからやや遅れていると評価した。
なお、変異体のT2ラインの構築・選別の過程で、予備的な知見ではあるものの、MpCOI1-FLAG homo/coi1-30 homoの変異体に対して始原ジャスモン酸リガンドであるdn-iso-OPDAを投与しても種子がつかず、不稔性が解消しないことが示唆された。稔実性はジャスモン酸の重要な生理機能の一つであり、MpCOI1-dn-OPDAの始原受容体-リガンドの組み合わせでは相補されていない可能性がある。このことは、人工的先祖帰りのコンセプトが計画通りin plantaでのジャスモン酸応答の部分的活性化として確認できる可能性を示唆することから、今後得られたT2個体からT3種子を構築し、十分な変異体種子の獲得と、続く生理応答解析を実施する計画である。
一方で、ゼニゴケについて所属研究室とスペインのSolano教授らとの共同研究で見出されたゼニゴケの新たな始原ジャスモン酸リガンドdelta4-dn-OPDA類について、標品の合成に基づく生理活性評価、重水素標識化体合成による微量ホルモン分子のLC-MS/MSでの定量分析を実施し、得られた結果について論文投稿中である。

今後の研究の推進方策

これまでの2年間で、ゼニゴケを含むコケ植物における始原ジャスモン酸リガンド、dn-OPDAおよびdelta4-dn-OPDA類の重水素標識化体を含む化学合成を随時行い、シロイヌナズナを用いた生理応答の評価に十分な化合物は既に準備済みである。今年度の進捗で、人工的先祖帰りの概念実証を目的とした変異体の導入遺伝子に対するホモラインが得られたことから、今後はそれら変異体に対する始原ジャスモン酸リガンドの投与とそれによるジャスモン酸マーカー遺伝子の発現解析、また重要なジャスモン酸の生理応答に起因する形質として、稔実性、生長阻害、防御応答活性を中心に生理応答を評価する予定である。これら変異体を用いた実験を通して、人工的先祖返り変異体におけるジャスモン酸応答の部分的活性化のコンセプトについて論文として取りまとめる。
なお、構造的な議論に向け、ゼニゴケのCOI1受容体の結晶化検討について、上記進捗報告には記述しなかったものの並行して取り組んでいるが、昆虫細胞での発現量が少ないことで現時点で結晶化に十分なサンプルの調整が難航していることから、タンパク質の安定性の向上、抗体の利用など、いくつかの方策を合わせて検討する予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Two distinct modes of action of molecular glues in the plant hormone co-receptor COI1-JAZ system2024

    • 著者名/発表者名
      Kaji Takuya、Matsumoto Kotaro、Okumura Taichi、Nakayama Misuzu、Hoshino Shunji、Takaoka Yousuke、Wang Jianxin、Ueda Minoru
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 27 号: 1 ページ: 108625-108625

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.108625

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] cis-OPDA-アミノ酸縮合体の合成と機能解析2024

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、西里祐宇保、齊藤里菜、Federica Brunoni、Jitka Siroka、Miroslav Strnad、Ondrej Novak、上田 実
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 植物ホルモンの構造進化の鍵を握る異性化反応2024

    • 著者名/発表者名
      野澤 慧、加治拓哉、吉松幸徳、西里祐宇保、Andrea Chini、Roberto Solano、上田 実
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケの始原植物ホルモンとホルモン進化の鍵を握る異性化反応2023

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、吉松幸徳、西里祐宇保、Andrea Chini、Roberto Solano、上田 実
    • 学会等名
      植物化学調節学会第58回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケの始原植物ホルモンの同定とホルモン進化の鍵を握る異性化反応2023

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、吉松幸徳、加藤信樹、櫻井春香、楊剛強、Guillermo H. Jimenez-Aleman、Roberto Solano、上田 実
    • 学会等名
      第65回天然有機化合物討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] JAシグナル受容体によるリガンド認識モードの示差走査蛍光測定による検討2023

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、松本幸太郎、中山美涼、星野隼治、Jianxin Wang、高岡洋輔、上田 実
    • 学会等名
      第17回バイオ関連化学シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケの新規始原jasmonate, Δ4-dinor-OPDAの合成・同定2023

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、吉松幸徳、加藤信樹、櫻井春香、Gangqiang Yang、Guillermo H. Jimenez-Aleman、Robert Solano、上田 実
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Δ4-dinor-iso-OPDAの合成と受容体親和性2023

    • 著者名/発表者名
      吉松幸徳、加治拓哉、Gangqiang Yang、加藤信樹、Guillermo H. Jimenez-Aleman、Robert Solano、上田 実
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケの新規始原jasmonate, Δ4-dinor-OPDAの合成・同定2023

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、吉松幸徳、加藤信樹、櫻井春香、Gangqiang Yang、Guillermo H. Jimenez-Aleman、Robert Solano、上田 実
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 始原植物ホルモン系を用いた植物ホルモンシグナル伝達の「人工的先祖返り」戦略2022

    • 著者名/発表者名
      加治拓哉、吉松幸徳、櫻井春香、加藤信樹、Wang Jianxin、上田 実
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会 第16回年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケの真の未同定植物ホルモン Δ4-dinor-iso-OPDA2022

    • 著者名/発表者名
      吉松幸徳、加治拓哉、加藤信樹、Guillermo H. Jimenez-Aleman、Robert Solano、上田 実
    • 学会等名
      植物化学調節学会第57回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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