研究課題/領域番号 |
22K14851
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石田 萌子 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (20800634)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | (-)-ネオエキヌリンA / 抗アレルギー効果 / 脱顆粒 / RBL-2H3細胞 / ネオエキヌリンA / 抗アレルギー / 構造活性相関 |
研究開始時の研究の概要 |
ネオエキヌリンAは海洋性真菌の二次代謝産物であり、これまでの研究により、肥満細胞や好塩基球によるヒスタミン等を含む顆粒の放出(脱顆粒)を抑制することが明らかになっている。ネオエキヌリンAの抗アレルギー効果に関する研究はなく、その作用機構や生体内における効果についても明らかになっていない。そこで本研究では、培養細胞およびアレルギーモデルマウスを用いて、ネオエキヌリンAの生体内外における抗アレルギー効果とその作用機構を解明することが目的である。また、ネオエキヌリンAの立体異性体や類縁化合物の活性を比較することで構造活性相関を解明し、高活性発現に関与する構造の同定と生体内標的因子の特定を目指す。
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研究実績の概要 |
(-)-ネオエキヌリンAは、海洋性真菌の二次代謝産物であるインドールアルカロイドである。本研究では、(-)-ネオエキヌリンAの生体内外における抗アレルギー効果とその作用機構の解明を目的としている。本年度は、ラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞を用いて、脱顆粒抑制による抗アレルギー効果の検討とその作用機構の解明に取り組み、下記に示す成果を得た。 RBL-2H3細胞を、ジニトロフェニル(DNP)特異的IgEで感作した後、培地に(-)-ネオエキヌリンAを添加し、その後DNP-HSAによる抗原刺激で脱顆粒を誘導した。顆粒中に含まれるβ-ヘキソサミニダーゼの放出率を指標として抗原誘導性脱顆粒に対する効果を評価した。その結果、(-)-ネオエキヌリンAは細胞毒性を示すことなく脱顆粒を有意に抑制した。(-)-ネオエキヌリンAが脱顆粒を抑制する作用機構を明らかにするため、細胞内カルシウムイオン濃度に及ぼす影響を検討したところ、抗原誘導性の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が(-)-ネオエキヌリンAにより抑制された。また、シグナル伝達因子に与える影響をウェスタンブロッティング法により検討した結果、脱顆粒シグナルの上流に位置するLynの活性化には影響せず、その下流にあるSykのリン酸化を抑制することが確認された。また、Aktのリン酸化レベルの低下も確認された。これらのことから、(-)-ネオエキヌリンAはSykおよびAkt経路を下方制御することで細胞外からのカルシウムイオン流入を阻害し、脱顆粒を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、令和4年度は、動物培養細胞を用いて、(-)-ネオエキヌリンAの脱顆粒抑制による抗アレルギー効果の検討とその作用機構の解明に取り組んだ。その結果、(-)-ネオエキヌリンAは細胞毒性を示すことなく脱顆粒を有意に抑制することが明らかになった。 IgE抗体の受容体であるFcεRIの下流に存在する細胞内伝達経路として、Lyn-Syk-LAT経路とFyn-Gab2-PI3K経路の少なくとも2つの経路が知られている。Lyn-Syk-LAT経路は細胞外からのカルシウムイオン流入に関与しており、Fyn-Gab2-PI3K経路は比較的カルシウムイオン応答に関与しないとされている。細胞内カルシウムイオン濃度に及ぼす(-)-ネオエキヌリンAの影響を検討したところ、抗原誘導性の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が(-)-ネオエキヌリンAにより抑制された。また、ウェスタンブロット解析により、(-)-ネオエキヌリンAはLynの活性化には影響せず、その下流にあるSykのリン酸化を抑制することが確認された。また、(-)-ネオエキヌリンAはPI3Kの活性化には影響せず、その下流にあるAktのリン酸化を抑制することが確認された。これらのことから、(-)-ネオエキヌリンAは、Lyn-Syk-LAT経路およびFyn-Gab2-PI3K経路のどちらにも作用することで、脱顆粒抑制効果を発揮することが示唆された。 以上の通り、(-)-ネオエキヌリンAの脱顆粒抑制による抗アレルギー効果とその作用機構を明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続いて、培養細胞における作用機構について検討を行う。(-)-ネオエキヌリンAがSykおよびAktのリン酸化を下方制御することは明らかになっているが、どのようにこれらシグナル分子の活性化に影響を与えているのかについては解明できていない。そこで、細胞表面上の受容体に対する作用も視野に入れ、種々のアンタゴニスト・アゴニストを用いることでLyn-Syk-LAT経路およびFyn-Gab2-PI3K経路における(-)-ネオエキヌリンAの作用点を明らかにする。また、実際のアレルギー病態に対する(-)-ネオエキヌリンAの効果を検討する前に、比較的容易に実施可能な受動皮膚アナフィラキシー(PCA)マウス(生体内脱顆粒誘導モデル)を用いて、生体に対する安全性や投与量・投与期間を検討するとともに、生体内脱顆粒誘導に対する抑制効果を明らかにする。その結果をもとに、スギ花粉症およびアトピー性皮膚炎モデルマウスに対する(-)-ネオエキヌリンAの投与効果(症状の改善効果、血中IgE量やヒスタミン量への影響、その他アレルギー関連細胞および因子への影響)を明らかにする。さらに、マウスの血中や種々の臓器における(-)-ネオエキヌリンAの動態についても明らかにする。
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