研究課題/領域番号 |
22K14878
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
畠山 友翔 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (20826573)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ハダカムギ / 硝子率 / 加水処理 / 施肥体系 / 降雨 |
研究開始時の研究の概要 |
大麦の1種であるハダカムギは、原麦内部が透明で硝子のように固くなる「硝子化」によって品質が低下する。そのため、この硝子化の程度を示す指標である「硝子率」を低く保つ事はハダカムギの品質向上において必須である。近年硝子率は、収穫前の降雨等により穂が濡れる事で低下すると報告されており、この現象を利用することで、硝子率の低い高品質なハダカムギを安定生産できると期待される。そこで本研究では、穂への加水処理による硝子率低下技術を検討すると同時に、原麦の吸水による硝子率低下メカニズムを解明し、高品質ハダカムギの安定生産へ貢献する。
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研究実績の概要 |
本年度では,登熟期後期における穂への加水が硝子率へ与える影響について解析するため,圃場に雨除けハウスを設置することで降雨の影響を排除し,開花後35,40,45および50日のいずれかのタイミングで霧吹きを用いて穂へ加水処理を行った.加水処理を行わなかった原麦の硝子率は90%以上と高い値となり,登熟期後期に穂が吸水しない場合,硝子率は高くなることが示唆された.加水処理を行った原麦の硝子率は,処理のタイミングによって異なり,開花後35日に加水処理した場合の硝子率は90%以上と高くなったが,開花後40日以降に加水処理を行った場合,硝子率は顕著に低くなった.以上のことから,開花後40日以降に穂への加水処理を行うことで,ハダカムギの硝子率低減が可能であることが明らかとなった.また,加水処理によって硝子率が低下しなかった開花後35日までは,原麦の水分含量が約35%と高いが,開花後40日以降では10%台まで低下していることが明らかとなった.さらに,加水処理によって硝子率が低下した原麦では,胚乳細胞内のタンパク質が顆粒としてではなく,デンプン粒の隙間を埋めるように漆喰状に存在していた.加えて,粉状質胚乳と硝子質胚乳の光学顕微鏡写真を解析した結果,デンプン粒が細胞内に占める割合は両胚乳間で違いがないのに対し,貯蔵タンパク質(漆喰状のタンパク質)の占有率は粉状質胚乳で有意に低いことが明らかとなった.これらのことを総合すると,水分含量が低くタンパク質顆粒が漆喰状となった原麦が吸水することで,タンパク質の占有面積低下によって胚乳細胞内に空隙が生じ,硝子率が低下すると推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の試験によって,開花後40日以降の穂への加水処理は硝子率を低下させることを明らかにした.この結果は,低硝子率なハダカムギの生産技術確立を目指す上で重要であると考えられる.さらに,この硝子率低下に原麦の水分含量と胚乳細胞内タンパク質の形態が関与していることを示唆した.このように,低硝子率ハダカムギ生産技術の検討と硝子率低下メカニズムの解明の双方にわたり有益な知見を得ることができたため,「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は年次反復を取ると共に,施肥量が異なる場合においても調査し,原麦タンパク質含量と加水処理の効果との関係を圃場で検証する.さらに,2022年度で使用したハダカムギ品種「ハルヒメボシ」に加え「マンネンボシ」についても同様の試験を行い,品種間差について調査する.メカニズムの解明については,胚乳細胞内のデンプン粒やタンパク質顆粒の経時変化を解析し,硝子率との関係を明らかにする.
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