研究課題/領域番号 |
22K14905
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
遠藤 悠 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (50837474)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 味覚受容体 / 脳 / 栄養センシング |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類でも昆虫でも,味覚受容体は舌などの味覚器官のほかに脳や消化管を含むさまざまな組織で発現している.昆虫の味覚受容体ファミリーは一般に種間での保存性が低く,このことが昆虫の多様な食性を生み出してきたと考えられる一方で,脳に発現する味覚受容体だけは例外的に高度に保存されている.これは脳内味覚受容体が重要な生理的意義を持つことを示唆する.本研究は昆虫脳内味覚受容体とその発現神経の機能についていくつかの仮説を検証し,脳内味覚受容体の存在意義を見出すことを目指す.
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研究実績の概要 |
ハエ脳内に発現する味覚受容体はフルクトース受容体として知られているが,脳におけるナチュラルリガンドがフルクトースであるかどうかは決着がついていない.先行研究では摘出脳において味覚受容体発現神経はフルクトースに応答し,その応答は味覚受容体が仲介することが示されている.2023年度はまず,生体内カルシウムイメージングを用いてハエ個体における当該神経のフルクトースに対する応答を調べたところ,確かに生体内でもこの神経は灌流する生理食塩水中のフルクトースに応答した.この応答の潜時は極めて短く,フルクトースが血液脳関門超えて輸送されるよりは,この神経の樹状突起が血液脳関門の間隙を縫うようにして血中に直接露出している可能性が考えられた.そこで,この神経の樹状突起に発現すると想定される味覚受容体が血中化合物を直接検出できる位置にあるかどうかについて化学遺伝学的手法を用いて検証した.その結果,この神経の樹状突起は血中からアクセスできる範囲になく,血液とは隔たれた環境にあることが示唆された.
次に,昨年度構築した,血液の循環を保ったまま神経活動を記録する生体内カルシウムイメージング系を用いて,糖摂食後の味覚受容体発現神経の応答を記録した.その結果,この神経はカロリーのある糖を摂食した時のみ応答することが明らかになった.味覚受容体欠損ハエ系統ではこの応答は確認されなかったため,カロリーのある糖に特異的な応答は脳内味覚受容体に仲介されていることが示唆された.しかし,味覚受容体発現神経のダイナミクスは糖摂食後の血中フルクトース濃度の変化では説明できなかった。したがって,糖摂食後の応答は血中フルクトースに依存しないと考えられ,これはナチュラルリガンドが別に存在することを示唆した.そこで,新規リガンドを探索したところ,ナチュラルリガンドの有力候補を発見し,これが糖摂食後の応答に必要であることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体における味覚受容体発現中枢神経のダイナミクスの計測に成功したことによって,カロリーが血中フルクトースに符号化されているとする既存の仮説の検証に一定のメドがついたため.さらに,糖摂食後の応答に必要な新規リガンドを見出し,その検証も計画通り進行しているため.
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今後の研究の推進方策 |
新規リガンドが糖摂食後の応答を引き起こすナチュラルリガンドであるか多角的に検証し,ハエ脳のカロリーセンシング回路の全貌を明らかにすることを目指す.
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