研究課題
若手研究
本研究では、成熟した森林において巨木の倒木に始まるギャップダイナミクスが多様な森林生物を育むのと同様に、天然の渓畔林からの巨木の倒木に始まる河川地形の推移が多様な水域環境を形成し、多様な河川生物の共存に貢献するという仮説(水域環境のShifting mosaic仮説)を検証する。本研究では巨木の倒木がどのように河川の氾濫原地形の寄与しているか野外観測するとともに、その地形や流量の年による変化がどのように河川の水生生物相を形作るのかについて調べる。
本年度は2019年以来研究を継続している北海道大学雨龍研究林のブトカマベツ川の氾濫原において生物相調査を継続するとともに、その地形形成および水文過程についての共同研究を進めた。2023年8月に10年に一度程度の大出水があったことにより氾濫原の地形が変化したことを受け、どういった要因により氾濫原の流路の形成および閉塞が起こるのかの要因について調べることができ、氾濫原地形全体が倒木の動態により動的平衡状態にあるといった状況証拠を得ることができた。また、洪水による地形変化の前後に取得したLiDARによる3D地形データを比較し、それぞれにおいて水の流れのシミュレーションを実施することで、どのように水の流れが変化したかについても予測できた。これらを来年まで取得を計画している生物の分布データと比較することで、天然の氾濫原の地形や水の流れとそれらに対する生物の応答が統合的に解明できる予定である。さらに、今年度はより大きな天然の氾濫原地形の残るアメリカ モンタナ州の スワン川において氾濫原の地形と生物相の研究を実施した。スワン川においては過去の航空写真から河川地形が刻々と変化している記録が残っており、これらの地形変遷の歴史と現況の地形および生物相を比較することにより「川の動き」が氾濫原生態系において果たす役割を示すことができる。これらのデータは現在より詳細な解析を行っており、次年度中に国際雑誌に論文として投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究を一通り行うことができた。また、当初予定していた以上にアメリカの大氾濫原における研究を進めることができ、新たな研究発展につながりそうである。
最終年度である次年度は、もう一年分の生物相の変化を追跡するとともに、今年度までの研究成果を論文などとして発表していくことに注力したい。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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