研究課題/領域番号 |
22K14919
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 着生植物 / 林冠 / 地衣類 / 巨樹 / 微生物 / 蘚苔類 / 土壌 / 微生物群集 / 林冠土壌 / 土壌微生物 / 分解特性 / バイオマス |
研究開始時の研究の概要 |
着生植物は森林生態系の種多様性に寄与する重要な存在であり、長い年月をかけて生存し続けてきた巨樹との関係性が深い。しかし、巨樹上の調査は技術的に容易でないことから、日本における林冠研究は発展途上にあり、森林生態系内の着生植物の分布特性や機能的役割については十分認識されていない。本研究では、巨樹上に発達する林冠土壌に着目して巨樹上の維管束植物群集の成立要因を検証する。また、非維管束隠花植物(蘚苔類・地衣類)の森林内での分布特性および生態学的機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、林冠という限られた空間に生育する着生植物群集の成立要因とその生態学的役割を明らかにすることである。具体的には、①巨樹上の林冠土壌に着目して、着生植物が利用可能な養分がどのように、どの程度供給されるかについて明らかにすることで、維管束着生植物群集の成立要因を理解すること、②森林内における非維管束植物の分布特性および生態系プロセスへの影響を明らかにすること、である。 目的①については、屋久島のスギ巨樹上の着生維管束植物の着生基質となっている林冠土壌(リター堆積物の腐植)に着目し、植物の根に共生して栄養塩を供給する菌根菌の群集構造について林床土壌と比較した。その結果、林冠と地上土壌で菌根菌の群集組成は異なり、それぞれの土壌の物理化学特性に応じて分布すること、真菌全体における菌根菌の割合は林冠土壌が地上よりも高いことが明らかとなった。ヤクスギ林冠では貧栄養環境下に応じた菌根菌群集が成立し、林冠独自の植物相発達に寄与している可能性があることが明らかとなった。 目的②については、樹幹着生性の地衣類や蘚苔類の非維管束植リター分解特性について、原生的な森林の林冠に出現するカブトゴケ属に着目し、それらのリターが維管束植物に比べて分解速度が遅い要因として考えられる二次化合物の影響や分解者群集の影響について調べた。その結果、二次代謝物は環境条件との交互作用においてリター分解に影響すること、微生物から小型土壌動物までの分解群集の違いが分解速度に影響しないことが明らかとなった。落葉老齢林の林冠に出現するカブトゴケ属は森林生態系の物質循環速度と分解者群集の動態に影響を与える可能性が示唆され、本属の保護とさらに詳細な分解過程の研究が必要とされる。 また、樹幹に着生する蘚苔類の群集集合則に宿主木の樹皮の形質が影響することを示唆する成果を論文に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は申請時から研究遂行に必要な調査地の選定や研究協力者との相談をおこなっていたため、その後の研究をスムーズに進めることができた
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果については学会で発表するとともに、学術誌へ投稿する準備を進めているる。 また、ヤクスギにおける林冠土壌の調査では、今後は着生している植物種とその土壌の物理化学特性や微生物群集との関連性についてより詳しく解析を進める予定である。さらに、蘚苔類や地衣類といった着生植物の、物質循環や地上部バイオマスといった生態系プロセスへの寄与について、引き続き調査を続けていく。
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