研究課題/領域番号 |
22K14924
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
坂下 渉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10867625)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 放射性セシウム / 森林 / 動的平衡状態 / 安定同位体セシウム / 福島第一原子力発電所事故 |
研究開始時の研究の概要 |
直接汚染された成木の放射性セシウム(137Cs)循環は、樹木から土壌への137Cs還元量と土壌から樹木への137Cs吸収量が釣り合う動的な平衡状態に近づいている。現在の137Cs循環がこの平衡状態にすでに達しているか否かによって、将来的な幹材部分の137Cs放射能濃度の収束値が異なり、幹材が利用可能な放射能濃度まで低減するかが決まるため、その評価は重要である。本課題では、樹体内の137Csと安定同位体セシウム(133Cs)の濃度比と、樹木から土壌への137Cs還元(落葉など)中のそれを比較することで、事故から10年以上経過した現在、樹木の137Cs循環が平衡状態に達しているか否かを評価する。
|
研究実績の概要 |
原発事故から10年以上経過した現在、直接汚染された落葉広葉樹の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かを評価するため、2022年9~10月に福島県川内村の三ツ石落葉広葉樹林の調査プロット内の優占樹種であるクリ・ミズナラ・コナラ・ヤマザクラの4樹種から樹幹流を採取し、その137Cs濃度と133Cs濃度の関係性を調べた。その結果、137Cs濃度と133Cs濃度の間には有意な正相関関係があり(r = 0.93, p < 0.001, N=9)、その回帰係数(濃度比)は0.0158 Bq/(L×ppt)であることが分かった。これは、当該調査範囲内であれば、137Csと133Csの濃度比の樹種間差が小さいことを示唆しており、落葉広葉樹の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かの判定にこの知見が役立つ。福島県川内村のヒノキ林においては、2023年9~10月に葉・樹皮・幹材と樹冠通過雨・樹幹流を採取した。現在、それらの137Cs濃度測定を進めている。 また、137Cs循環が動的な平衡状態に近づいていると考えられる2022-2023年現在、落葉広葉樹の樹幹流の137Cs濃度が葉と外樹皮のどちらからの寄与が主となっているかを明らかにするため、その関係性について調べた。その結果、外樹皮ではみられなかった正相関関係が葉と樹幹流の137Cs濃度の間にあり、葉からの寄与が主であることが明らかになった。また、葉から樹幹流の137Cs濃度推定ができることも分かり、これはモデルによる幹材の137Cs濃度推定の際のパラメータ決定に貢献できる。当該研究成果は、査読付き国際誌に論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究を進め、福島県川内村の三ツ石落葉広葉樹林調査地及び三ツ石ヒノキ林調査地から、予定していた試料を採取することができた。137Cs濃度測定はおおむね順調に進んでおり、133Cs濃度測定についても、想定通りのスピードで進んでいる。また、現時点で査読付き論文および国内学会での発表といった成果も得られていることから、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
福島県川内村のヒノキ林において、追加のサンプリングを行う。そして、福島県川内村の落葉広葉樹林及びヒノキ林ですでに採取された試料も含め、137Cs濃度と133Cs濃度の測定を行い、その濃度比が一様か否かの評価を行う。そして、原発事故から10年以上経過した現在、直接汚染された成木の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かを評価する。
|