研究課題/領域番号 |
22K14934
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢萩 拓也 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (50808029)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 深海 / 軟体動物 / 幼生生態 / 生物地理 / 進化生態 / 進化 / 浮遊幼生 |
研究開始時の研究の概要 |
深海底には、軟体動物、節足動物、環形動物や棘皮動物など多様な底生生物が生息する。底生生物の多くは生活史の初期に海中を浮遊する幼生期をもち、同幼生期は種の地理的分布決定や個体群動態、進化過程に重要な役割を果たす。しかしながら、深海底生生物における浮遊幼生期の有無や浮遊発生種の分散過程には未解明な点が多い。本研究では軟体動物を材料として、貝殻化学分析に基づく幼生行動履歴の復元、飼育・遺伝学的解析による分散動態の推定、ならびに、深海・浅海性近縁分類群における幼生生態比較を行い、深海底生生物の分散生態と進化的背景、生態系の成立過程を評価する。
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研究実績の概要 |
本研究では、浅海から深海まで幅広い環境に生息し、付加成長する殻をもつ点で初期生態研究において優れた分類群である軟体動物を材料として、貝殻化学分析に基づく幼生行動履歴の復元、飼育・遺伝学的解析による分散動態の推定、ならびに、深海・浅海性近縁分類群における幼生生態比較を行うことで、深海底生生物の分散生態と進化的背景、生態系の成立過程を評価する。 令和5年度の実施内容を以下に示す。(1) 学術研究船「白鳳丸」によるKH-23-5次航海に参加し、日本とドイツの国際共同研究員と共に、千島海溝および日本海溝の水深3400 mから8000 m における底生生物の種多様性および水深分布の大規模調査を行った。同航海では、深海耐圧カメラを用いて、海底環境や曳網機器の動作を記録し、観測手法の改善に繋がる知見を取得しつつ、計41度の曳網調査を実施することに成功した。また、(2) 深海熱水噴出域や浅海域に生息する腹足動物を材料とした、貝殻化学分析に基づく幼生行動履歴復元に関する研究成果を原著論文としてまとめ、国際学術誌に投稿した。さらに、(3)深海熱水噴出域に生息する系統と近縁である、岩礁・干潟の転石下や沈木などの還元的環境に生息するユキスズメ科腹足類について、地理的分布の把握、集団遺伝学的解析、幼生・成体の飼育観察を実施した。深海および浅海域における底生生物の幼生生態進化に関するデータを含む、生物地理学的に新規な知見をまとめ、国際学術誌上での公表に向けて準備を進めている。以上の成果について、第71回日本生態学会および2023年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の学術研究船「白鳳丸」KH-22-8次航海に続いて、KH-23-5次航海に参加し、千島海溝および日本海溝に生息する底生生物の生態学的調査を実施した。また、浅海から深海に生息する軟体動物を研究材料として、飼育観察、遺伝学的解析、貝殻化学分析に基づく生育履歴環境復元を行い、深海底生生物の初期生態と進化に関する新規の知見を得ており、本課題研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査航海で採集された底生生物標本について、形態および遺伝子情報の対比に基づく種分類を進める。また、プランクトン採集や貝殻の化学分析に基づき、熱水噴出域固有種を含む深海底生生物の浮遊幼生期における空間分布を評価する。深海性種および近縁の浅海性系統について、幼生生態を対比する。深海底生生物における海洋分散動態および進化的背景、深海生態系の成立過程を考察し、国際学術誌上での成果発表に向けて、原著論文化を進める。
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