研究課題/領域番号 |
22K14937
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小原 静夏 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10878276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 植物プランクトン / 微細藻類 / 貧栄養化 / 強光 / 鉛直移動 |
研究開始時の研究の概要 |
日本最大の閉鎖性海域である瀬戸内海では近年,海の生態系の土台となる生物,植物プランクトンのうち主要な生産者である珪藻類に代わり,有害有毒な種を含む鞭毛藻類が台頭している。申請者はこの分類群組成の変化の原因が,瀬戸内海の栄養塩減少と強光に曝される機会の増加にあるという仮説を立てた。本申請研究では珪藻と鞭毛藻の強光防御機構の違いを室内の培養実験と現場海域での野外試験によって比較し,この仮説を立証する。
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研究実績の概要 |
本研究では,海の主要な基礎生産者である珪藻と,漁業に有害な種を含み物理的鉛直移動が可能な鞭毛藻を対象とした。植物プランクトン12種(珪藻9種,鞭毛藻3種)の種ごとの熱放散能(NPQ)の最大値を比較した。珪藻1種と鞭毛藻1種で低NPQ種が見つかり,これら2種は熱放散以外の強光回避機構(鉛直移動による物理的回避を含む)を持つことが示唆された。 同じ13種について,リン制限下におけるNPQ変化の違いを比較した。13種の内9種はリン制限下では熱放散による光防御が十分でなく光合成収率が低下し,リン制限下で強光ストレスを受けやすくなることが示唆された。9種の内訳は珪藻が7種,鞭毛藻2種であった。一方で高い光合成収率を保った種は3種で,内訳は珪藻1種,鞭毛藻2種であった。 これらの培養実験から,1)一部に潜在的なNPQ能が極めて低い種がいること,2)珪藻の内の多くが低栄養と強光の複合ストレスに弱い傾向があること,3)珪藻にも鞭毛藻にも貧栄養かつ強光下に有利な種と不利な種が混在していること,4)同じ属でも種によってこの複合ストレスへの応答が異なる場合があること,が示唆された。今後はさらに多くの種について試験し,鞭毛藻の場合は鉛直移動特性との関連を解析していく予定である。 また現場シミュレーションを実施するために夏季に広島県呉市沿岸にて週1回の現場植物プランクトンモニタリングを実施した。調査期間中,常に珪藻が優占し鞭毛藻がほとんど出現しなかったため現場シミュレーションは断念したが,副産物として得られたこのモニタリングデータを得た。調査期間中,日照時間の増加とともに珪藻2属の遷移が確認できた。今後は実測した光強度および栄養塩(特にリン)濃度の変化との関係を解析し,上記の実験で得た種ごとの複合ストレスへの応答特性の違いと現場の遷移が一致するかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養実験の方は概ね順調に進展しているが,現場での実証試験は現場の植物プランクトン遷移に依存するため2022年度は実施できなかった。2023年度も実施予定だが,2022年度同様に代替案として現場モニタリングとそのデータ解析を平行して実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
各植物プランクトン種の熱放散NPQポテンシャルの比較と,栄養塩制限下でのNPQおよび光合成収率の変化をみるための室内培養試験は順調に進展しており,2023年度はさらに多くの種について試験予定である。低栄養かつ強光下における珪藻と鞭毛藻の競合をみるために二つのシミュレーションを実施予定である。室内シミュレーションは2022年度は実験装置を準備し,培養試験によって選定された種について2023年度試験予定である。現場シミュレーションは2022年度実施予定であったが,鞭毛藻が出現せず断念した。2023年度も現場シミュレーションができるように準備中であるが,現場の出現種に依存する実験であるため,代替案として2022年度と同様に夏季に週1回の現場モニタリングを実施する予定である。
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