研究課題/領域番号 |
22K14943
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
飯島 真理子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 学振特別研究員 (20915483)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | サンゴ / 底質 / リン酸塩 / 重金属 / 石灰質 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題は,申請者がこれまでに明らかにしたサンゴ稚ポリプの骨格形成をリン酸塩が直接阻害すること,石灰質の底質にリン酸塩が吸着し,蓄積している蓄積型栄養塩という知見を元に,「陸域負荷がサンゴの生育に及ぼす影響の実態解明」を目的とし,1)蓄積型栄養塩をはじめとする陸域負荷のより詳細な実態解明,2)底質に含まれる稚サンゴに対して急性毒性を有する物質の探索,3)リン酸塩が稚サンゴの骨格形成に及ぼす影響の分子機構の解明などの分析の3課題を実施する。
|
研究実績の概要 |
本課題は,申請者がこれまでに明らかにしたサンゴ稚ポリプの骨格形成をリン酸塩が直接阻害すること,石灰質の底質にリン酸塩が吸着し,蓄積している蓄積型栄養塩という知見を元に,「陸域負荷がサンゴの生育に及ぼす影響の実態解明」を目的とし,1)蓄積型栄養塩をはじめとする陸域負荷のより詳細な実態解明,2)底質に含まれる稚サンゴに対して急性毒性を有する物質の探索,3)リン酸塩が稚サンゴの骨格形成に及ぼす影響の分子機構の解明などの分析の3課題を実施する。本課題の目的は,沿岸域の陸域負荷のサンゴ礁生態系への実態を解明しサンゴ礁を保全することであるが,同時に持続可能な地下水利用法を構築する上で欠かせない知見をもたらし,持続可能な社会システム構築にも資することである。 沖縄県の南部沿岸域や石垣島近海の石西礁湖等さまざまな沿岸域で採取した石灰質の底質の蓄積型栄養塩の測定を行い,地下水や河川など陸域負荷の大きい地点で非常に高濃度のリン酸塩が吸着していることが明らかになった。陸域負荷の大きいこれらの地点の底質共存下でサンゴ稚ポリプを飼育すると,骨格形成が阻害されるだけでなく生残率も低下した。生残率が大きく低下した地点の底質には重金属が多く吸着しており,これらがサンゴの生残率に影響を及ぼしたと推定される。このようなサンゴ稚ポリプの飼育実験により,形態観察では確認できなかったリン酸塩の発現遺伝子への影響や石灰質の底質から溶出してきた銅や亜鉛などの急性毒性物質を及ぼす可能性がある物質が明らかになってきている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海域への陸域負荷の実態を明らかにするため,市街地や農地が比較的多い,沖縄県南部沿岸域,国立公園に指定されている石垣島近海の石西礁湖で重点的に石灰質の底質に吸着したリン酸塩濃度(蓄積型栄養塩)の調査を行った。各地点の底質と海水を採取し,乾燥・篩分けした後に,海水と共にチューブに入れてリン酸塩を溶出させ,底質の表面に吸着したリン酸塩を調べたところ,石西礁湖において,石垣島や黒島,竹富島周辺の底質から非常に高濃度の蓄積型栄養塩が検出された。同じ島の中でも地下水や河川などの流入がある陸域負荷の大きいと想定される地点で特に蓄積型栄養塩の濃度が高くなった。また底質溶出液の金属分析をICP-MSにより行ったところ,沖縄県沿岸域の底質には銅や亜鉛,アルミニウムや鉄などの重金属が多く含まれていた。リン酸塩同様に銅や亜鉛などは炭酸カルシウムに対して高い吸着性を有することから,リン酸塩だけでなく重金属も石灰質の底質に吸着・蓄積していることが明らかになった。サンゴの飼育実験を行ったところ,採取した地点により,サンゴ稚ポリプの生残率が大きく異なった。生残率が大きく低下した沖縄県の大度海岸や具志頭の底質にはリン酸塩も高濃度吸着していたが,銅や亜鉛,アルミニウムや鉄などが多く含まれていた。リン酸塩だけではこのような生残率低下にはつながりにくいことから,これらの重金属が生残率に大きく影響していることが考えられる。また発現遺伝子を解析することで,骨格の形態観察だけでは確認できなかったリン酸塩による影響を検証するために,野外調査及び室内飼育実験で得られたサンプルのRNAを抽出,網羅的遺伝子解析(RNA-seq)の条件検討を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題は,申請者がこれまでに明らかにしたリン酸塩がサンゴ稚ポリプの骨格形成を直接的に阻害することと,陸域由来のリン酸塩が石灰質の底質に蓄積している蓄積型栄養塩から,1)蓄積型栄養塩をはじめとする陸域負荷のより詳細な実態解明,2)底質に含まれる稚サンゴに対して急性毒性を有する物質の探索,3)リン酸塩が稚サンゴの骨格形成に及ぼす影響の分子機構の解明などの分析の3課題を実施する。 1年目の結果を踏まえて,蓄積型栄養塩を陸域負荷の大きい地点で調査する。市街地や農地が比較的多い,沖縄県南部沿岸域,国立公園に指定されている石垣島近海の石西礁湖で重点的に調査する。採取した底質共存下での稚サンゴの飼育実験を行い,走査型電子顕微鏡(SEM)や マイクロCTスキャンで骨格形成に及ぼす影響のより詳細な評価を行う。また底質に吸着している金属分析もICP-MSにより実施する。沖縄県沿岸域の底質には銅や亜鉛,アルミニウムや鉄などの重金属が多く含まれていたことから,陸域負荷が大きく生物がほとんどいないような地点ではこれらの影響を受けていることが想定される。採取した底質共存下でサンゴの飼育実験を行い,重金属のサンゴ生残率への影響評価を詳細に行う。 発現遺伝子を解析することで,骨格の形態観察だけでは確認できなかったリン酸塩による影響を検証するために, 1年目は野外調査及び室内飼育実験で得られたサンプルのRNAを抽出,網羅的遺伝子解析(RNA-seq)の条件検討を行った。これらの結果を踏まえ,再度飼育実験を行い,形態観察では見られない影響評価を行なっていく。
|