研究課題/領域番号 |
22K14944
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
森 郁晃 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 特別研究員(PD) (60849537)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 貧酸素水塊 / 化学合成独立栄養細菌 / 堆積物 / 大村湾 / 閉鎖性内湾 / ダークカーボン |
研究開始時の研究の概要 |
(仮説) 貧酸素海域への酸素供給は化学合成独立栄養細菌の炭酸固定を促進し、結果として生成された有機化合物は、海底堆積物表層において一次生産者としての役割を担う可能性がある。実際に申請者は、閉鎖性内湾で夏季に貧酸素化した海域から採取した堆積物コアに酸素を供給すると、好気性細菌による酸素消費速度が上昇するとともに化学合成独立栄養細菌が劇的に増加することを明らかにしている。本研究では先行研究の結果をふまえ、 貧酸素海域への酸素供給がもたらす、有機化合物合成の活性化、細菌群集の存在量、種類、呼吸代謝等の変化を明らかにし、貧酸素海域の炭素循環について総合的な理解を実現する。
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研究実績の概要 |
長崎県大村湾は、極めて閉鎖的な内湾であり、夏季に貧酸素水塊が湾中央部に形成される。貧酸素水塊は初夏から秋にかけて底層に形成されるが、一時的な強風等による断続的な水塊撹拌の影響によって解消と再形成が繰り返されている。貧酸素海域への酸素供給は、好気性細菌による酸素消費速度の上昇と化学合成独立栄養細菌の劇的な増加を引き起こすことがマイクロコズムレベルでの培養実験によってを明らかになっている。そこで本研究では、酸素供給が貧酸素海域へ行われることで、化学合成独立栄養細菌による炭酸固定が促進され、結果として生成された有機化合物が海底堆積物表層において一次生産者としての役割を担うという仮説を立て検証する。本年度は、2014年に大村湾で月に一度、採取・解析された堆積物表層の16SrRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンスデータの再解析を実施した。炭酸固定を行う微生物は海底表層に優占しており、貧酸素水塊の形成・解消に伴う海底直上の溶存酸素濃度の長期的な増減と共に存在量を緩やかに変化させていることが確認できた。さらに水塊撹拌による一時的な溶存酸素濃度の上昇によって、一部の化学合成独立栄養細菌グループ(Campylobacterales目)が劇的に増加する現象が確認できた。さらに貧酸素水塊が発達した2022年8月に大村湾にて堆積物試料を採取し、安定同位体プロービング法による炭酸固定微生物の同定を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり海洋観測を実施し、貧酸素水塊形成期における堆積物コアサンプルを採取できた。さらに採取した堆積物試料を用いて安定同位体プロービング法による炭酸固定微生物の同定に向けた実験を開始することが出来た。また、過去に採取された海底直上の溶存酸素濃度ロガーデータと堆積物試料中の微生物群集組成データを再解析し、一時的な溶存酸素濃度の上昇によって、一部の化学合成独立栄養細菌グループ(Campylobacterales目)が劇的に増加する現象が確認できた。これらは仮説が現場環境下で実際に起きている現象であることを支持している。これらのことからおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
安定同位体プロービング法を実施した試料のシークエンス解析を実施し、大村湾中央部海底で炭酸固定を担う化学合成独立栄養細菌を同定する。さらに真核微生物を対象としたシークエンス解析を行うことで、化学独立栄養細菌が生成した有機化合物を捕食する真核生物を明らかにし、微生物の炭酸固定を起点とした炭素循環を明らかにする。さらに培養実験に用いた堆積物試料中の有機量と安定同位体比を測定し、酸素供給時の炭酸固定速度を明らかにする。
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